【退職後の傷病手当金】従業員によく聞かれる13の質問を紹介

「退職予定の従業員から傷病手当金について相談された」

「会社を辞めてからも傷病手当金は受け取れるのか、気になっている様子だった」

「お金や仕事など今後の生活についてかなり悩んでいるみたいだった。人事の私が力になってあげたい」

人事労務担当者の方で、こんな悩みを抱えていませんか?

業務外のケガや病気等で会社を休んでいる従業員にとって、傷病手当金は大切な給付です。

退職してからも受け取れるのか不安に思い、人事労務に相談する従業員も多いと思います。

実際に何度か相談された、人事労務担当者の方もいるのではないでしょうか?

退職者に向けてしっかりと情報提供できるように、この記事では退職後の傷病手当金についてよく聞かれる質問を紹介していきます。

4つのカテゴリーに分けて、それぞれ解答していきます。

  • 退職後の傷病手当金について
  • 申請手続きについて
  • 基本手当(失業保険)について
  • 他の制度について

紹介する質問を参考にすれば、従業員の不安を解消できるので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

目次

【従業員が知りたい】退職後の傷病手当金についてよく聞かれる13の質問

退職後の傷病手当金についての質問

退職後の傷病手当金についての質問

まずは退職後の傷病手当金についてよくある質問を紹介・解答していきます。

解答していくのは以下の質問です。

  • 退職後も傷病手当金はもらえる?
  • 傷病手当金をもらいながら社会保険の被扶養者になれる?
  • 傷病手当金が不支給になるのはどんなケース?

ひとつずつ解答していきます。

Q1.退職後も傷病手当金はもらえる?

A.次の3つの要件を満たせば、退職後も傷病手当金を受け取れます。

  • 資格喪失時に傷病手当金を受給している、または支給要件を満たしていること
  • 退職日に労務不能で出勤していないこと
  • 退職日までに継続して1年以上被保険者期間があること
Q2.傷病手当金をもらいながら社会保険の被扶養者になれる?

A.傷病手当金を除いて収入がない場合、給付日額が以下の金額であれば、被扶養者と認められます。

スクロールできます
年齢1日あたり支給額
60歳未満3,611円以下
60歳以上(または障害者)5,000円以下

ただし1日あたり支給額だけでなく、被扶養者の範囲等の要件を満たしていることも条件になります。

Q3.傷病手当金が不支給になるのはどんなケース?

A.次のようなケースは不支給と判断されてしまいます。

  • 医師の治療指導に従わないとき
  • 引っ越しや転院等で1日空きができてしまったとき
  • 傷病が同一疾病でなくなったとき
  • 一旦復職できる状態になったとき

申請手続きについての質問

申請手続きについての質問

続いては、退職してからの申請手続きについての質問に解答します。

  • 退職後の傷病手当金の申請はどうやればいいの?
  • 傷病手当金支給申請書はどこでもらえる?
  • いつまでに申請手続きをすればいい?
  • 申請したらどれだけの期間、傷病手当金を受給できる?

退職後の傷病手当金の手続きは被保険者本人が行なわなくてはいけないので、特に気にされる方も多いでしょう。

人事労務担当者の方は、このカテゴリーの質問を特に注目してくださいね。

Q4.退職後の傷病手当金の申請はどうやればいいの?

A.次の流れで手続きを行なってください。

  1. 傷病手当金支給申請書を記入する
  2. 担当医師に記入を依頼する(事業主からの記入は不要)
  3. 必要に応じて添付書類を用意する
  4. 加入していた保険者(協会けんぽや健康保険組合)に提出する

添付書類は被保険者によって異なるので、申請前に保険者に確認してください。

Q5.傷病手当金支給申請書はどこでもらえる?

A.保険者のサイトからダウンロード等して使用してください。

分からない場合は保険者に問い合わせてください。

Q6.いつまでに申請手続きをすればいい?

A.各申請期間の初日から2年以内に申請してください。

在職中に有給休暇を取得するなどして、1回目の申請を資格喪失日からする場合、1回目の申請期限は退職の4日前から2年以内になります。

Q7.申請したらどれだけの期間、傷病手当金を受給できる?

A.支給が始まった日によって異なります。

  • 支給開始日が令和2年7月1日以前の場合は、支給開始から最長で1年6ヶ月
  • 支給開始日が令和2年7月2日以降の場合は、支給開始から通算して1年6ヶ月

退職後に傷病手当金を受給する場合は、退職日の翌日から支給期間が起算されます。

なお、退職日にすでに支給されている場合は、残りの期間を限度として受給されます。

人事・労務でお悩みなら是非ご相談ください

「専門性と豊富な経験」: 社労士18名(うち特定社労士11名)、ハラスメント防止コンサルタント、採用支援、中退共導入支援、産業カウンセラーなど、幅広い専門性を持った職員が支援します。
「多様な顧問先への対応」: 従業員数が数名から8,000名超の様々な規模・業種の顧問先に対応しており、多くの事例と実績があります。
「担当者制と迅速な対応」: メイン担当者制に加え、グループ制や複数担当者制で、「連絡が取りやすい」「回答が早い」といった支援体制を確立しています。
「業務のデジタル化」: ITシステムを活用して労働・社会保険の諸手続きや給与計算などをデジタル化・効率化しています。
「高いセキュリティー」: プライバシーマークを取得し、日本でも有数の更新回数です。個人情報の保護に実績と信頼があります。

飯田橋事務所には色々な特徴やサービスがございます、TOPページをぜひご覧ください👇

関連記事はこちら👇

基本手当(失業保険)についての質問

雇用保険の基本手当(失業保険)についての質問

次の質問は、雇用保険の基本手当についてです。

  • 傷病手当金と一緒に基本手当ももらえる?
  • 基本手当の受給期間はいつまで延長できる?
  • 延長手続きはどうやってするの?
  • 延長手続きが出来るのはいつからいつまで?

「傷病手当金と関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、どちらも退職者の方にとっては欠かせない情報です。

傷病手当金と併せて相談される方もいると思われるので、ぜひ参考にしてください。

Q8.傷病手当金と一緒に基本手当ももらえる?

A.もらえません。

基本手当の支給対象は「働く意思があり、いつでも就職できる能力がある人」です。

ハローワークに求職の申込をすると、傷病手当金は支給されなくなります。

ただし、基本手当の受給期間を延長することは可能です。

Q9.基本手当の受給期間はいつまで延長できるの?

A.けがや病気が理由で受給できない場合は、離職日の翌日から最長4年まで延長できます。

Q10.延長手続きはどうやってするの?

A.次の流れで手続きを行なってください。

  1. 受給期間延長申請書をハローワークで受け取る
  2. 以下の書類を用意する
    • 離職票-2
    • 医師の診断書など延長理由を確認できるもの
  3. 申請書を記入し、他の書類と一緒にハローワークに提出する
  4. 受給期間延長決定通知書が届く
  5. 受給期間が延長される

郵送や代理人による提出も可能ですが、代理人の場合は委任状が必要になります。

Q11.延長手続きができるのは、いつからいつまで?

A.「離職日の翌日から31日後」から「離職日の翌日から起算して4年を経過する日」までです。

なお、延長後の受給期間が4年に満たない場合は「延長した受給期間の最終日」まで手続きができます。

いずれにしても、期限日ギリギリに申請してすぐに受給手続きをすると、所定給付日数のすべてを受給できない可能性があります。

できるだけ早めに申請を行いましょう。

他の制度についての質問

他の制度についての質問

最後は、傷病手当金以外の制度についての質問です。

  • 傷病手当金のほかに利用できる制度はある?
  • 障害年金ってどんな制度?

傷病手当金以外に利用できる制度はないかというのは、休業中の方にとって気になるポイントです。

このカテゴリーの質問も欠かさずにチェックしましょう。

Q12.傷病手当金のほかに利用できる制度はある?

A.要件に該当する方は「障害年金」を受給できます。

Q13.障害年金ってどんな制度?

A.ケガや病気等で生活や仕事が制限されるときに受け取れる年金です。

次の要件を満たしている人は、障害年金を受給できます。
(②と③はどちらかが当てはまっていればOKです)

①初診日において国民年金または厚生年金保険の被保険者であるか、または国民年金の被保険者であった人で60歳以上65歳未満の国内居住者であること

②初診日時点で65歳未満であり、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

③初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付期間と免除期間が合わせて2/3以上あること

④障害認定日※に一定以上の障害の等級になっていること
(※初診日から1年6ヶ月が経過した日、または1年6ヶ月以内に症状が固定化した日のこと)

障害年金の申請手続きは、年金事務所や市(区)役所または町村役場で行います。

なお、同じケガや病気で障害年金と傷病手当金を受ける場合は、傷病手当金の額が調整されます。

まとめ:退職後の傷病手当金について相談に来た従業員の力になろう

まとめ:退職後の傷病手当金について相談に来た従業員の力になろう

最後に、相談者が特に気にされる2つの疑問と解答をおさらいしましょう。

Q.退職後も傷病手当金はもらえる?

A.3つの要件を満たせば受け取れます。

  • 資格喪失時に傷病手当金を受給している、または支給要件を満たしていること
  • 退職日に労務不能で出勤していないこと
  • 退職日までに継続して1年以上被保険者期間があること
Q.退職後の傷病手当金の申請はどうやればいいの?

A.次の流れで手続きを行なってください。

  1. 傷病手当金支給申請書を記入する
  2. 担当医師に記入を依頼する
  3. 必要に応じて添付書類を用意する
  4. 保険者に提出する

ご紹介した退職後の傷病手当金についての質問を参考にすれば、相談に来た従業員の一助となりますよ。

しかし人事労務担当者としては、ケガや病気、うつ病などの精神障害で退職する従業員はできる限りなくしたいですよね。

「退職するとは聞いてないけど、休みがちな従業員がいる…どんな風に対応したら良いのか知りたい」とお悩みの方は、こちらの記事をご覧ください。

メンタルヘルス不調者の初期対応|不調に気づくための2つの視点+α (sr-suzuki.jp)

従業員のメンタルヘルス対応における人事労務担当者の役割を解説しているので、ぜひ実践してみてくださいね。

目次