労働保険の年度更新とは?継続事業中心に令和8年度の手続きをわかりやすく解説

労働保険(労災保険・雇用保険)に加入している事業者は、毎年「年度更新」と呼ばれる手続きを 行う必要があります。

特に、一般的な会社や店舗などの継続事業では、適切な賃金集計と申告・納付が求められます。

令和8年度(2026年度)の年度更新では、電子申請義務化の対象となる法人に対して「紙の申告書」の送付が廃止されるなど、実務上の大きな変更があります。

本記事では、労働保険の年度更新について、基本的な仕組みや手続きの流れ、計算方法をわかりやすく解説します。

令和8年度特有の注意点についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

労働保険の年度更新とは?わかりやすく解説

労働保険の年度更新とは、労災保険と雇用保険に関する保険料について、毎年まとめて申告・ 納付する手続きです。

すべての労働保険適用事業場に義務付けられており、前年の実績に基づいて確定精算し、あわせて新年度分の概算申告を行います。

ここでは、労働保険制度の基本や年度更新の仕組み、令和8年度から変更となる申告手続きの注意点について解説します。

参考:労働保険とはこのような制度です|厚生労働省

労働保険の概要

労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称であり、労働者を一人でも雇用している事業主に加入義務がある保険制度を指します。

保険の種類制度の内容
労災保険業務中や通勤途中に発生した災害により、負傷・疾病・障害・死亡した場合に保険給付を行う制度
雇用保険失業時や育児休業・介護休業を取得した際に、生活や雇用継続を支援するための給付を行う制度

これら労働保険に関する保険料は、原則として事業主が毎年まとめて申告・納付する仕組みとなっています。

年度更新とは?

年度更新とは、労働保険に加入している事業主が毎年1回、確定精算と次年度見込み分の申告・納付を行うことを指します。

保険料は原則として前払い方式です。

そのため、1年間の実績に基づき、前年度の確定精算と新年度の概算保険料申告を行う作業が求められます。

たとえば、令和8年度の申告では、令和7年度(令和7年4月〜令和8年3月)の賃金総額に基づいて確定保険料を精算し、それと同時に令和8年度(令和8年4月〜令和9年3月)分の概算保険料を見込んで申告する流れになります。

年度更新は法律(労働保険徴収法)に基づく義務であり、期限内に申告・納付を行わないと延滞金や追徴金が発生するリスクもあるため注意が必要です。

参考:労働保険とは|厚生労働省

【令和8年度の変更点】電子申請義務化法人は「紙の申告書」が届かない

令和8年度の年度更新から、実務上で注意すべき変更点があります。

電子申請が義務付けられている以下の事業場については、例年送付されていた「紙の申告書(緑や青のA4封筒)」の送付がなくなります。

  • 資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社(保険業法)
  • 投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律)
  • 特定目的会社(資産の流動化に関する法律)

引用:労働保険年度更新に係るお知らせ|厚生労働省

その代わりに、電子申請に必要な情報を記載した通知書が「定形サイズの茶封筒」で届きます。

従来の大きな封筒を待っていると、申告漏れに繋がる恐れがあるため、届く封筒の形が変わることを必ず全社的に共有しておきましょう。

年度更新は郵送・窓口・電子申請で対応可能

労働保険の年度更新申告書は、郵送・窓口提出に加え、電子申請(24時間対応・GビズID対応)も可能です。

郵送労働局労働保険特別会計歳入徴収官宛に送付
窓口提出管轄の労働局へ直接持参
電子申請「e-Gov」経由でオンライン提出可能

電子申請は、平日昼間に窓口へ行く必要がなく、自宅やオフィスから手続きできるため、年々利用が広がっています。

なお、電子申請を利用するには、事前に「GビズID」などの電子証明書が必要となる場合があるため、期限に余裕をもった準備が重要です。

参考:労働保険年度更新に係るお知らせ|厚生労働省

【令和8年度】年度更新スケジュール:6月1日〜7月10日

令和8年度の労働保険年度更新の手続き期間は、次のとおりです。

対象地域申告・納付期間
通常地域令和8年6月1日(月)~7月10日(金)
指定被災地域期限延長あり(※状況に応じ後日告示予定)

ここでは年度更新スケジュールの詳細を紹介します。

通常地域は令和8年6月1日~7月10日

令和8年度の労働保険年度更新は、通常地域において6月1日(月)から7月10日(金)までの期間で実施されます。

この期間内に、以下の手続きを完了させる必要があります。

  • 前年度(令和7年度)確定保険料の申告・納付
  • 今年度(令和8年度)概算保険料の申告・納付

年度更新の対象となる賃金には、基本給だけでなく各種手当も含まれるため、集計時には誤りがないよう慎重な確認が求められます。

賃金総額の算定ミスや申告漏れが発覚すると、後日修正手続きや追加納付が必要になる場合があるため注意が必要です。

特に7月10日の最終日は、窓口や電子申請サイトが混雑しやすいため、期限に余裕をもった申告がおすすめです。

被災地特例と相談窓口の変更について

大規模な災害等が発生した場合、厚生労働省は対象地域の事業主に対して、年度更新に関する特例措置(期限延長など)を設けることがあります。

その場合、対象地域に所在する事業主は、告示される延長後の期限までに手続きを行えば問題ありません。

また、令和8年度からは相談体制も新しくなっています。

これまで提供されていた「労働保険相談チャット」は2026年3月31日で終了し、2026年4月1日からは「労働基準監督署チャットボット」に統合されました。

不明点がある場合は、新しいチャットボットや管轄の労働局へ相談するようにしましょう。

年度更新手続きの基本的な流れ(継続事業の場合)

ここでは、労働保険料の算定から申告書の提出、保険料納付まで、基本的な手続きの流れを整理して解説します。

令和8年度は、前年度の精算と新年度の概算で適用する保険料率が異なる点に注意が必要です。

手順内容
①賃金集計表を作成対象期間(令和7年度分)の賃金総額を集計
②申告書を作成令和7年度(確定)と令和8年度(概算)の保険料を計算・記入
③申告書を提出・保険料を納付労働局または電子申請で手続き

各手順について詳しく解説します。

①賃金集計表を作成する

まずは、対象期間に支払った賃金の総額を正確に集計します。

対象期間は、前年度の4月1日から当年度の3月31日までです。
(例:令和8年度の申告では、令和7年4月1日~令和8年3月31日まで)

賃金集計は、「支払日」ではなく「賃金締切日(支払い確定日)」ベースで行いましょう。

たとえば、月末締め翌月25日払いの場合、令和8年3月末締め(4月25日払い)分までが、令和7年度の確定保険料の対象となります。

賃金には、以下のような手当や賞与も含む点に注意しましょう。

● 基本給
● 各種手当(通勤手当、役職手当、家族手当など)
● 賞与(ボーナス)
● 時間外手当・休日出勤手当

ただし、出張旅費や見舞金など、労働の対価ではない支払いは除外されます。

正確な賃金集計を行うため、賃金台帳や給与明細、就業規則などの資料を照らし合わせながら作成することが重要です。

参考:令和8年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省

②申告書を作成する:雇用保険率の改定に注意

賃金総額を集計したら、労働保険年度更新申告書を作成します。

作成する申告書には、以下2つの内容を記載する必要があります。

● 前年度(令和7年度確定分)の保険料:実際に支払った賃金総額に、「令和7年度の保険料率」を掛けて算出
● 今年度(令和8年度概算分)の保険料:新年度に支払う見込みの賃金総額に、「令和8年度の新保険料率」を掛けて算出

ここで最も重要なのが、令和8年度から雇用保険率が改定されている点です。

流れで同じ料率で計算しないように注意しましょう。

労災保険料と雇用保険料はそれぞれ計算する必要があり、両方の金額を合算して記載します。

③申告書を提出・保険料を納付する

申告書が完成したら、提出と保険料の納付を行います。

令和8年度はペイジー(電子納付)が利用できないため、以下の方法から選択しましょう。

  • 口座振替:事前に手続きが必要・最も確実で便利
  • 金融機関窓口:送付された納付書(または通知書に同封の納付書)を使用
  • 電子申請:e-Govから手続きを行い、指定の方法で納付

なお、納付額が一定以上の場合は、概算保険料について分割納付(3期分割)が認められる場合があります。

分割納付ができる条件は、次のとおりです。

● 概算保険料が40万円以上であること(労災保険又は雇用保険のいずれか一方のみの保険関係が成立している事業の場合は20万円以上であること)
● 保険年度の中途で保険関係が成立した事業については、9月30日までに保険関係が成立していること

各納期限に間に合わなかった場合は、延滞金が発生するリスクがあるため、各期ごとにスケジュール管理を徹底しましょう。

労働保険料の計算方法と保険料率

労働保険料は、労災保険料と雇用保険料を合算して算出します。

それぞれの保険料は対象となる賃金総額に対して、所定の保険料率を乗じることで計算可能です。

令和8年度の年度更新では、「確定分(令和7年度)」と「概算分(令和8年度)」で異なる保険料率を適用する必要があるため、注意しましょう。

労災保険料率の計算

労災保険料は、業種ごとに異なる労災保険料率を用いて算定します。

料率は事業の危険度に応じて設定されており、たとえば建設業などは高く、事務系業種は比較的低く設定されています。

労災保険料の計算式は、「労災保険料 = 賃金総額(千円未満切り捨て) × 労災保険料率」です。

たとえば、賃金総額が1,000万円、労災保険料率が0.3%の事業所の場合、「労災保険料=10,000,000円 × 0.003 = 30,000円」となります。

なお、労災保険料は全額を事業主が負担する仕組みです。

労災保険料率は、原則として3年ごとに改定されますが、令和8年度は令和7年度と変わらない料率が適用されます。

参考:令和8年度の労災保険率について(令和7年度から変更ありません)|厚生労働省

雇用保険料率の計算:令和8年度の改定

雇用保険料は、事業主と従業員の双方が負担する点が、労災保険との大きな違いです。

政府が毎年度定める雇用保険料率をもとに算定されますが、令和8年度(2026年度)は雇用保険率が改定されるため、計算ミスが非常に起こりやすい年です。

計算式:雇用保険料(事業主負担分+従業員負担分)= 賃金総額 × 雇用保険料率

【令和8年度の料率の使い分け】

申告区分対象期間適用する雇用保険料率
確定保険料令和7年4月〜令和8年3月令和7年度の保険料率
概算保険料令和8年4月〜令和9年3月令和8年度の保険料率

このように、一枚の申告書の中で料率の使い分けが必要です。

厚生労働省が配布する「年度更新申告書の書き方」や、自動計算ツールを活用し、計算ミスを防ぎましょう。

参考:令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省

賃金総額に含めるもの・含めないもの

正確な計算のためには、賃金総額の範囲を正しく把握しておくことが不可欠です。

含めるもの基本給、賞与、残業代、通勤手当、役職手当、家族手当、住宅手当など(労働の対価として支払われるものすべて)
含めないもの退職金、結婚祝金、見舞金、出張旅費、実費弁償的なものなど

特に、「通勤手当」や「賞与」の含め忘れは、実務上で非常に多いミスです。

賃金台帳と照らし合わせながら、漏れがないかダブルチェックを行いましょう。

年度更新を忘れた場合や遅れた際のリスク

労働保険の年度更新は法律で定められた義務であり、申告・納付期限(令和8年7月10日)を過ぎてしまうと不利益が発生します。

3つのリスクについてみていきましょう。

1. 追徴金(確定保険料又はその不足額の10%)の発生

期限までに申告書を提出しなかった場合、政府が独自に保険料の額を決定します。

そして、決定された確定保険料又はその不足額の10%に相当する額が「追徴金」として課されることになります。
※概算保険料には追徴金は適用されません。

たとえば、確定保険料が100万円だった場合、10万円の追徴金を余計に支払わなければならず、正常な事業運営に影響する可能性があります。

2. 延滞金の加算

保険料の納付が遅れた場合、納期限の翌日から完納の日までの日数に応じて、年14.6%(最初の2ヶ月間は軽減処置あり)の割合で延滞金が加算されます。

延滞金は、税務申告上の経費にもできないため、ただのコストとなってしまいます。

3. 行政指導や是正勧告の可能性

年度更新手続きを放置していると、労働基準監督署による調査の対象となったり、行政指導や是正勧告を受けたりするリスクもあります。

また、労働保険料に未納がある状態では、助成金の申請が通らなくなるなどの実務上のデメリットも発生します。

「忙しくて忘れていた」「申告書が届いていないと思っていた」といった理由は通用しないため、万が一期限を過ぎてしまった場合は、速やかに管轄の労働局へ相談し、指示に従って手続きを行いましょう。

【令和8年度】年度更新で注意すべきポイント

労働保険の年度更新では、正確な申告と納付を行うために、いくつか注意すべきポイントがあります。

ここでは、特に誤りが起こりやすい点や、手続き時に気をつけたいポイントを整理して解説します。

「茶封筒」の見落としに注意する

令和8年度の年度更新から、電子申請義務化の対象事業場には、「紙の申告書」が入ったA4封筒が届きません。

代わりに届くのは、電子申請に必要なアクセスコードが記載された「定形サイズの茶封筒」です。

「いつもの大きな封筒が届かないから、まだ手続きは先だ」と思い込んでいると、申告期限(7月10日)を過ぎてしまう恐れがあります。

届いた郵便物は、封筒の形にかかわらず必ず中身を確認しましょう。

確定分と概算分で「雇用保険率」を使い分ける

計算ミスで最も多いのが、確定保険料と概算保険料の両方に同じ料率を適用してしまうケースです。

令和8年度の年度更新では、令和7年度の確定分には「旧率」を、令和8年度の概算分には「新率」を適用する必要があります。

一枚の申告書の中で料率が混在するため、書き間違いや入力ミスがないか、入念にチェックしましょう。

申告書の訂正ルールに注意する

提出後に申告書の内容に誤りが見つかった場合、訂正申告を行う必要があります。

訂正が必要になった場合でも、放置せず、速やかに所定の手続きを行うことが重要です。

まとめ

労働保険の年度更新は、すべての適用事業所に義務付けられている重要な手続きです。 

令和8年度は「申告書の送付廃止」「雇用保険率の改定」「ペイジー終了」など、実務に影響する変更点がいくつかあるため注意しましょう。

期限内(6月1日〜7月10日)の正確な申告・納付を怠ると、追徴金や延滞金といった重いペナルティが課されるため正確な手続きが欠かせません。

「電子申請への対応が不安」「複雑な賃金集計や料率改定に自信がない」という場合には、ぜひ社会保険労務士法人飯田橋事務所へご相談ください。

本記事を参考に、令和8年度の年度更新を万全の体制で進めましょう。

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