賞与の社会保険料とは?計算方法・保険料率・免除ケースをわかりやすく解説

賞与の社会保険料とは?計算方法・保険料率・免除ケースをわかりやすく解説

賞与(ボーナス)を支給する際、従業員の手取りは額面より少なくなります。

これは、賞与からも毎月の給与と同様に社会保険料と所得税を控除するためです。

ただし、賞与の社会保険料は給与とは計算方法が異なり、特定のルールや例外ケースも存在します。

本記事では、賞与にかかる社会保険料の種類・計算方法・免除となるケースまで、給与計算担当者が押さえておくべきポイントを解説します。

目次

賞与にかかる社会保険料の種類

賞与にかかる社会保険料の種類

賞与からも毎月の給与と同様に社会保険料を控除する必要があります。

ただし、すべての税金・保険料が対象となるわけではありません。

控除するものとしないものを整理しておきましょう。

控除する4種類:健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険

賞与から控除する社会保険料は、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の4種類です。

2026年4月以降は、子ども子育て支援金も控除します。

毎月の給与から控除する保険料と種類は同じで、保険料率も同じです。

ただし、計算の基礎となる金額の扱いが給与とは異なります。

住民税と労災保険料は賞与から控除しない

住民税は賞与から控除しません。

住民税は前年の所得をもとに年間の税額が確定し、毎月の給与から均等に控除する仕組みのためです。

また、労災保険料は全額が事業主負担となるため、給与・賞与ともに控除することはありません。

賞与の社会保険料の計算方法

賞与の社会保険料の計算方法

賞与の社会保険料は、「標準賞与額」をもとに計算します。

この点が給与とは異なります。

社会保険の種類によって計算基礎や上限額のルールが異なるため、それぞれの違いを正確に把握しておくことが重要です。

標準賞与額とは:賞与支給額から1,000円未満を切り捨てた額

賞与の社会保険料は、「標準賞与額」をもとに計算します。

標準賞与額とは、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた金額のことです。

例えば、賞与支給額が458,700円の場合、標準賞与額は458,000円となります。

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の計算式と料率一覧

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、標準賞与額に各保険料率を乗じて、労使折半(÷2)した金額です。

雇用保険料は、会社と従業員の双方が負担しますが、半分ずつではなく、会社の方が負担割合が多くなっています。

保険料率は給与計算のときと同じで、主な料率は以下のとおりです。

保険の種類保険料率会社負担従業員負担
健康保険料9.85%4.925%4.925%
厚生年金保険料18.3%9.15%9.15%
子ども子育て支援金0.23%0.115%0.115%
雇用保険料
(一般の事業)
13.5/10008.5/10005/1000

※(令和8年度・協会けんぽ東京都・40歳未満の場合)

雇用保険料の料率は、農林水産業、建設業の場合、上記とは異なります。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は、賞与の総支給額(1円単位)に雇用保険料率をかけて計算します。

1,000円未満の切り捨ては行いません。

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料との計算方法の違いは、給与計算上のミスが起きやすいポイントのため注意が必要です。

計算例:賞与50万円の手取りシミュレーション

計算例:賞与50万円の手取りシミュレーション

実際の手取り額を具体的な数字で確認しましょう。

以下の条件で、賞与50万円が支給された場合の社会保険料と手取り額を試算します。

  • 居住地:東京都
  • 加入保険:協会けんぽ
  • 年齢:40歳未満(介護保険料なし)
  • 事業種別:一般の事業
  • 賞与支給額:500,000円(標準賞与額:500,000円)

【各保険料の金額と手取りの目安】※例:令和8年6月15日支給

保険の種類計算式従業員負担額
健康保険料500,000円×49.25/100024,625円
厚生年金保険料500,000円×91.5/100045,750円
雇用保険料500,000円×5/10002,500円
子ども子育て支援金500,000円×1,15/1000575円
社会保険料合計73,450円

社会保険料の合計は約73,450円で、賞与額面の約15%が控除される計算です。

実際の手取りはここからさらに所得税が控除されるため、額面の75〜80%程度が目安となります。

標準賞与額の上限額

標準賞与額の上限額

標準賞与額には保険の種類ごとに上限額が設けられており、上限を超えた部分には保険料がかかりません。

上限額の仕組みは健康保険・介護保険と厚生年金で異なるため、それぞれ確認しておきましょう。

健康保険・介護保険は年度累計573万円まで

健康保険・介護保険の標準賞与額には、年度(毎年4月1日〜翌年3月31日)の累計額で573万円という上限が設けられています。

年間の賞与合計がこの上限を超えた場合、超過分については保険料の計算対象外となります。

たとえば夏季賞与300万円・冬季賞与300万円を支給した場合、合計600万円のうち573万円までが標準賞与額の対象です。

なお、年度途中で転職した場合、健康保険の累計額は保険者(協会けんぽや健康保険組合)単位で管理されます。

前職と現職が同じ保険者に属している場合は、前職での標準賞与額も累計に含まれるため、中途入社の従業員がいる場合には、給与計算時に注意が必要です。

厚生年金は1か月あたり150万円まで

厚生年金保険の上限額は、1か月あたり150万円です。

こちらは健康保険のような年度累計ではなく、支給のたびに月単位で上限が適用されます。

同じ月に2回以上賞与を支給した場合は合算して、異なる月であれば、それぞれの月で150万円までの上限が適用されます。

給与の社会保険料との違い

給与の社会保険料との違い

賞与の社会保険料は「給与と同じ保険料率」が適用されますが、計算の仕組みは別物です。

あらためて整理しておきましょう。

標準報酬月額(給与)と標準賞与額(賞与)について

給与の社会保険料は、月々の報酬を一定の幅で区分した「標準報酬月額」をもとに計算します。

一方、賞与は支給のたびに実際の賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」を使って計算します。

給与のように標準報酬月額という等級表に当てはめる必要はなく、支給額が直接計算の基礎になる点が大きな違いです。

社会保険上の「賞与」の定義:年3回以下の支給が対象

社会保険における「賞与」は、名称にかかわらず年3回以下の頻度で支払われる賃金を指します。

「決算手当」「期末手当」といった名目であっても、年3回以下であれば賞与として社会保険料の計算対象です。

一方、年4回以上支給されるものは「報酬」として毎月の給与と同じ扱いになります。

社内で支給している手当がどちらに該当するか、一度確認しておくことをおすすめします。

賞与から社会保険料を徴収しないケース

賞与から社会保険料を徴収しないケース

原則として賞与には社会保険料がかかりますが、例外もあります。

該当するケースを見落とすと徴収ミスや過払いにつながるため、しっかり押さえておきましょう。

退職月の賞与:資格喪失月は原則徴収なし(月末退職は例外)

社会保険料は、被保険者資格を喪失した月(退職月)には徴収しないのが原則です。

ただし、月末退職の場合は翌月1日が資格喪失日となるため、退職月(今回の例は7月分)の社会保険料が発生し、賞与からも徴収が必要になります。

例:7月10日に賞与50万円を支給、同月に退職する場合

退職日資格喪失日7月分の社会保険料賞与からの徴収
7月30日(月途中)7月31日発生しない不要(支払済なら返還)
7月31日(月末)8月1日発生する必要

月末かどうかというわずか1日の違いで、賞与にかかる社会保険料の徴収が変わります。

退職月に賞与を支給する際は、退職日を必ず確認するようにしましょう。

育児休業・産前産後休業中:健保・厚年は免除、雇用保険は対象

育児休業・産前産後休業中に賞与を支給した場合、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・子ども子育て支援金は免除されます。

ただし免除が適用されるのは、賞与を支給した月の末日をまたいで、連続1か月超の育児休業を取得している場合に限ります。

例えば12月に賞与を支給する場合、12月31日を含む形で1か月超の育休・産休を取得していれば免除対象ですが、12月中に育休が終了している場合や、1月中の終了日が連続して1ヶ月超えなかった場合は免除されません。

一方、雇用保険料は育児休業中であっても免除の対象外です。

混同しやすいポイントなので、賞与支給時には必ず確認するようにしましょう。

賞与の社会保険料によくある質問

賞与の社会保険料に関して、担当者からよく寄せられる疑問をまとめました。

実務で迷いやすいポイントを中心に回答します。

Q1. 賞与から控除する社会保険料は支給額に対して何%程度ですか?

賞与額の約15%が目安と言われています。

内訳は健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・子ども子育て支援金、40歳以上65歳未満の場合は介護保険料の合計で、年齢や都道府県・加入している健康保険組合等によって多少異なります。

Q2. 賞与支払届はいつまでに提出すればいいですか?

賞与を支給した日から5日以内に、「被保険者賞与支払届」を日本年金機構事務センターまたは管轄の年金事務所に提出する必要があります。

提出内容をもとに標準賞与額が決定され、保険料額と将来の年金給付額の計算に反映されます。

なお、賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。

提出漏れや遅延が続くと年金事務所の調査対象になる可能性もあるため、支給のたびに速やかに対応しましょう。

Q3. 転職した年の賞与は累計額に含まれますか?

健康保険・介護保険の標準賞与額の累計は、保険者(協会けんぽや健康保険組合)単位で管理されます。

転職前と転職後で同じ保険者に属している場合、前職での標準賞与額も累計に含まれます。

中小企業の多くは協会けんぽに加入していますが、転職者が入社した際は前職の保険者を確認しておくことが重要です。

同一年度内に複数の事業所から賞与を受け取っている場合は、累計額の管理に特に注意が必要です。

まとめ:賞与の社会保険料計算で押さえるべきポイント

賞与の社会保険料は、給与と保険料率は同じでも計算の仕組みが異なります。

標準賞与額の端数処理・上限額の管理・雇用保険料の計算基礎の違いなど、賞与特有のルールを正確に把握しておくことが重要です。

また、退職月や育児休業中の賞与については例外的な取り扱いがあるため、支給のたびに該当ケースがないか確認する習慣をつけておきましょう。

賞与支給時の給与計算や社会保険手続きについてお悩みの方は、社会保険労務士法人飯田橋事務所までお気軽にご相談ください。

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