いまさら聞けない「人事制度」。あなたの会社にも人事制度はある!

「人事制度」と聞くと職務資格制度とか職務等級制度とか評価制度といった、何やら難しい単語がまず頭に浮かぶと思います。しかし実は10人規模の会社であっても「うちには小難しい人事制度なんかない」と思っていてもちゃんと人事制度は存在しています。

「人事制度」といっても様々な定義がされています。
ためしにウィキペディアで「人事制度」を調べると

「人事制度は、従業員の企業に対するエンゲージメントを高めるため、目標設定、評価レビュー、能力開発/後継者育成、褒賞が密接に連携して運営される体系である。人事制度は、従業員意識さらに組織風土に大きな影響を与えるほか、人件費の負担や増加にも影響を与える。」

とあります。何だかわかったようなわからないような…

ただ、何となくわかってきたことは従業員の「処遇」に関するしくみ全般(人事上のさまざまな施策の集合体)なのではないか、ということです。

また、広義には以下のような領域も人事制度が担うといわれます。
・募集、採用
・労働時間、休日、休暇管理
・人事異動、昇進、昇格
・教育、能力開発
・出張、転勤
…だんだん耳にする事柄が登場するようになりました。

ここで話はすこし戻って従業員の「処遇」は何のためにするのか…
すぐ頭に浮かぶのは「賃金」や「賞与」を決めるためではないでしょうか。

どんな小規模の会社でも募集、採用の際に給与はいくらいくらからです、とうたって募集すると思います。労働時間だって、休日だって会社で決めないわけにはいきません。否応なしに「人事制度」の領域に足を踏み入れているわけです。

ここで問題になるのが労働基準法をはじめとする「人」に関する法律です。

経営者が一番頭を悩ませるのが「賃金」の決定と言いますが、まず賃金に関する法律がよくわからない!労働時間や休日だって法律があります。

次に、法律を踏まえても隣に比べて賃金があまりにも安ければ「人」の定着はありませんし、あまりにも高い賃金で人が定着しても会社が倒産しては何にもなりません。

適切な賃金がよくわからない、のです。
売り上げがどのくらいあって、経費がどのくらいあって、隣の同業者に「おたくは従業員にどのくらい給与を出している?」と聞き、または業界紙などをみて何となく給与を決めている…。

日本には労働者が自分の給与を交渉するような慣習がないため、給与に不満があれば口に出すことなく退職する場合もあります。問題は「納得できる客観的な決まりごと」があるのかないのかが会社にとっても労働者にとっても大事なことなのです。

そこで「納得できる客観的な決まりごと」とは一体どんなものなのか、ということになります。ここで話の最初に出た職務資格制度とか職務等級制度とか評価制度などと呼ばれている難しい単語が出で来るのですが、これは何かの法律を反映した用語ではありません。先ほど述べた職場での「納得できる客観的な決まりごと」を表現しようとした単語に過ぎないのです。

そうなんだ…と思っていただければ幸いです。
ここからが本題です。

先ほど、
「どんな小規模の会社でも募集、採用の際に給与はいくらいくらからです、とうたって募集すると思います。労働時間だって、休日だって会社で決めないわけにはいきません。否応なしに「人事制度」の領域に足を踏み入れているわけです。」

というお話をしましたが、どんな小規模な会社でも社長の頭の中で「人事制度」が機能しているわけです。それをどのように文字に起こし、表現するかでその会社の「人事制度」が姿を現すわけです。

われわれ社会保険労務士はそんな社長のお手伝いをします。
社長の頭の中にある「人事制度」を目に見える形で「納得できる客観的な決まりごと」として労働者に示し、会社の発展とそこで働く労働者の橋渡しをするのです。

執筆者

社会保険労務士  植田 秀樹 

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