入社手続きは書類の準備・回収・行政手続き・社内対応がバラバラな時系列で発生するため、フェーズごとに整理して進めることが抜け漏れ防止につながります。
本記事では、会社側が対応すべき入社手続きを5つのフェーズに整理し、必要書類・期限・トラブル対応まで解説します。
入社後までスムーズに対応できるよう、企業担当者の方はぜひ最後までご覧ください。
会社側の入社手続き:5つのフェーズと対応期限の一覧

入社手続きについて会社側で必要な対応内容を5つのフェーズに分けて表にまとめました。
| フェーズ | 対応期限 | 主なやること |
| 1 | 内定通知後〜入社2週間前 | 内定通知書・労働条件通知書の作成と送付、入社書類の案内 |
| 2 | 入社当日 | 書類の回収、雇用契約書の締結、備品・PCの準備 |
| 3 | 入社後5日以内 | 健康保険・厚生年金の資格取得届の提出 |
| 4 | 入社翌月10日まで | 雇用保険の資格取得届の提出 |
| 5 | 入社後随時 | 税金・法定帳簿など社内手続きの対応 |
フェーズ3・4は法令上の提出期限が定められているため、特に注意が必要です。
それぞれのフェーズについて詳しくみていきましょう。
1. 内定通知後〜入社2週間前の手続き

内定が決まったら、まず会社側が内定者に内定通知書を送付するところから手続きが始まります。
できるだけ早めに動くことが大切です。
採用通知書(内定通知書)の作成と送付
採用通知書は、会社が内定者に対して採用の意思を正式に伝える書類です。
法的な交付義務はありませんが、内定の事実を書面で残しておくことでトラブルの防止につながります。
記載する主な項目は以下のとおりです。
- 採用決定の旨
- 入社予定日
- 配属予定部署・職種
- 給与・勤務時間などの基本条件(概要)
- 提出書類・手続きの案内
送付方法は、郵送・メール・電子契約サービスのいずれでも問題ありません。
ただし、後から「受け取っていない」というトラブルを防ぐために、受領確認が取れる方法を選ぶことがおすすめです。
入社承諾書・誓約書の準備と送付
入社承諾書は、内定者が入社の意思を正式に示すための書類です。
一方、誓約書は秘密保持・競業避止・服務規律の遵守などを約束させる書類で、それぞれ役割が異なります。
送付時には返送期限を明記しておくことが重要で、期限の目安は送付から1〜2週間程度が一般的です。
入社日までに余裕を持って回収できるよう、逆算して設定しましょう。
なお、誓約書については入社当日に回収する会社も珍しくありません。
自社のフローに合わせて、どちらのタイミングで回収するかを決めましょう。
労働条件通知書・雇用契約書の作成と交付
労働条件通知書は、労働基準法に基づき会社に交付義務がある文書です。
雇用形態にかかわらず、すべての労働者に対して入社日までに交付しなければなりません。
法令上、必ず明示しなければならない「絶対的明示事項」は以下のとおりです。
- 労働契約の期間
- 就業場所・従事する業務の内容
- 始業・終業時刻、休憩時間、休日・休暇
- 賃金の決定・計算・支払方法、締め日・支払日
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
一方、雇用契約書は法的な作成義務はありませんが、双方が署名・押印することで合意内容を明確にできるため、作成・締結することをおすすめします。
実務上は労働条件通知書と雇用契約書を兼ねた書類(労働条件通知書兼雇用契約書)として、1枚にまとめているケースが多いです。
内定者への提出書類の案内
内定者に入社時の提出書類を事前に案内しておくことで、当日の回収漏れを防げます。
案内のタイミングは内定通知書と合わせて送付するか、入社2週間前を目安に別途連絡するのが一般的です。
提出を依頼する主な書類は、以下のとおりです。
- 扶養控除等異動申告書
- マイナンバー(個人番号)の提供
- 給与振込先口座の届出
- 雇用保険被保険者証(前職がある場合)
- 源泉徴収票(前職がある場合)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 健康診断書(会社が指定する場合)
- 住民票記載事項証明書
この他、健康保険の被扶養者がいる場合の書類についても記載しておくと、内定者が慌てずに対応できるでしょう。
2. 入社当日の手続き

入社当日は、書類の回収・契約の締結・備品の準備など、対応が集中するタイミングです。
事前に準備を整えておかないと、当日バタバタして対応漏れが発生しやすくなります。
チェックリストを活用しながら、抜け漏れなく進めましょう。
内定者からの書類回収
入社当日は、事前に案内した書類をまとめて回収します。
必須書類と状況に応じて提出を求める書類を区別して管理すると、スムーズに確認できるでしょう。
| 区分 | 書類名 |
| 必須 | ・扶養控除等異動申告書 ・マイナンバー(個人番号)の提供 ・給与振込先口座の届出 ・入社承諾書 ・誓約書 |
| 状況に応じて | ・雇用保険被保険者証(前職がある場合) ・源泉徴収票(前職がある場合) ・年金手帳または基礎年金番号通知書 ・健康診断書 ・住民票記載事項証明書 |
当日回収できなかった書類は、提出期限を個別に設定して後日回収しましょう。
雇用契約書の締結と労働条件の最終確認
雇用契約書は2部作成し、会社と本人がそれぞれ1部ずつ保管します。
署名・押印の前に、記載内容を本人と一緒に確認する時間を設けることが大切です。
口頭でも補足説明を行いながら締結することで、「聞いていた条件と違う」といった入社後のトラブルを防ぐことができます。
特に試用期間・給与・勤務時間・休日については、認識のズレが起きやすいため丁寧に説明・確認しましょう。
備品・PCの貸与と社内システムへの登録
入社当日に備品やPCがすぐに使用できるよう、勤怠システム、業務で使用するデータベース等へのアクセス権限の付与なども忘れずに準備しておきましょう。
事前に貸与物リストを作成しておき、準備状況を入社前日までに確認しておきましょう。
一般的な貸与物は、以下のとおりです。
- PC・スマートフォン(会社支給の場合)
- 社員証・入館証
- 制服・ユニフォーム(必要な場合)
- 各種ログイン情報(社内システム・メール・チャットツール)
社内システムへの登録は、IT部門がある場合は事前依頼が必要なケースもあります。
入社日が決まった時点で早めに連携しておきましょう。
3. 入社後5日以内に必要な手続き

入社後5日以内が、社会保険の加入手続きの期限です。
法定の期限ということで、実務では入社日に書類が揃えば速やかに手続きを進めましょう。
この期限は法令で定められており、現在は被保険者証の交付はなくなっていますが、本人が入社して間がないタイミングで病院にかかるような場合、マイナ保険証の情報が古いままになっていると不具合が生じてしまうためです。
入社当日または翌日には着手できるよう、書類を事前に準備しておくことが重要です。
健康保険・厚生年金被保険者資格取得届の提出
健康保険・厚生年金の加入手続きは、資格取得届を管轄の年金事務所に提出することで行います。(健康保険が健康保険組合の場合は、年金事務所と健康保険組合の両方に申請します。)
法定の提出期限は資格取得日(原則として入社日)から5日以内ですが、書類が揃えば速やかに手続きを進めましょう。
提出に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- マイナンバーまたは基礎年金番号
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届は、年金事務所、健康保険組合の窓口で届出する以外に、郵送、電子申請での提出も可能です。
紙での提出と比べて処理が早くなるケースもあるため、電子申請の導入を検討してもよいでしょう。
扶養家族がいる場合の追加手続き
入社する従業員に扶養家族がいる場合は、資格取得届に加えて以下の書類を提出します。
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 国民年金第3号被保険者関係届(配偶者が第3号被保険者に該当する場合)
これらの書類は資格取得届と同時に提出するのが原則です。
提出が遅れると、扶養家族のマイナ保険証の資格情報の更新も遅れるため、入社前に扶養の有無を確認しておきましょう。
パート・アルバイトの加入条件と注意点
パート・アルバイトであっても、一定の条件を満たす場合は社会保険への加入が必要です。
2024年10月から従業員数51人以上の企業では、以下の条件をすべて満たす場合に加入義務が生じます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8万8,000円以上
- 2か月を超える雇用見込みがある
- 学生ではない
なお、2027年10月からは、企業規模要件が段階的に拡大される予定です。
パート・アルバイトを多く雇用している場合には、最新の法令情報を定期的に確認しておきましょう。
4. 入社翌月10日までに必要な手続き

雇用保険の法定期限は、社会保険と比べて期限に余裕がありますが、入社日に書類が揃えば速やかに進めましょう。
複数名が同時入社する場合はまとめて処理できるため、月初に一括して対応するなど運用を定めておきましょう。
雇用保険被保険者資格取得届の提出
雇用保険の加入手続きは、資格取得届を事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に提出することで行います。
提出期限は、入社日の属する月の翌月10日までです。
(4月3日入社の場合、5月10日まで)
提出方法は以下の3つから選択できます。
- ハローワークの窓口への持参
- 郵送
- 電子申請
提出時に必要な主な情報は、以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 賃金台帳・労働者名簿・タイムカードなど(確認を求められる場合あり)
電子申請は24時間対応しており、窓口に出向く手間が省けるため、紙で対応している場合は、電子申請への切り替えを検討するとよいでしょう。
雇用保険被保険者番号の確認と紛失時の対応
入社する従業員が過去に雇用保険に加入していた場合、雇用保険被保険者番号が割り当てられています。
この番号は資格取得届の記載に必要なため、入社時に雇用保険被保険者証を提出してもらいましょう。
ただ、番号が不明な場合でも、手続きは進められます。
マイナンバーから番号照会が可能なため、雇用保険被保険者証が手元にない場合はマイナンバーで対応しましょう。
5. 入社後随時対応が必要な手続き

フェーズ1〜4と異なり、このフェーズには法令上の厳密な期限がないものが中心ですが、給与計算や帳簿管理に直結するため、入社後できるだけ早めに対応しておくことが重要です。
所得税・住民税の手続き
所得税については、扶養控除等異動申告書を受け取ることで、毎月の給与から源泉徴収すべき税額を算出できるようになります。
住民税の納付方法は、普通徴収か特別徴収があります。
前職から継続して特別徴収する場合、普通徴収から特別徴収に切り替える場合などが考えられます。
提出期限は各自治体によって異なるため、早めに確認しておきましょう。
法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)の作成
労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つは、労働基準法上の作成義務がある「法定三帳簿」です。
| 帳簿名 | 主な記載内容 | 保存期間 |
| 労働者名簿 | 労働者氏名・生年月日・履歴・性別・住所・従事する業務の種類・雇入年月日・退職や死亡年月日、その理由や原因 | 5年(当面3年) (退職・死亡後) |
| 賃金台帳 | 労働者氏名・性別・賃金の計算期間・労働日数・労働時間数・時間外労働時間数・深夜労働時間数・休日労働時間数・基本給や手当等の種類と額・控除項目と額 | 5年(当面3年) (最後の記入日から) |
| 出勤簿 | 出勤・退勤時刻、労働時間など | 5年(当面3年) (最後の記入日から) |
法定三帳簿は、労働基準法の改正によって5年間の保存が必要になりましたが、現在は経過措置として3年間となっています。
将来的な義務化も見据えて、5年保存を基準に運用しておくとよいでしょう。
会社側の入社手続きチェックリスト
入社手続きのチェックリストをまとめましたので、ぜひご活用ください。

本チェックリストの対応項目はあくまで一例です。
対応する順番や時期は会社の運用によって異なる場合があるのでご注意ください。
入社手続きでよくあるトラブルと対処法

手続きの件数が多い分、入社手続きはトラブルが発生しやすい場面でもあります。
よくあるケースとその対処法をあらかじめ把握しておきましょう。
基礎年金番号・雇用保険被保険者番号が分からない場合
年金手帳や雇用保険被保険者証を紛失している場合は、前職の雇用保険資格喪失確認通知書や離職票、年金事務所からの郵送物でも被保険者番号・年金番号が確認できますので、それらを提出してもらうという方法があります。
基礎年金番号が不明な場合は、マイナンバーを記載した上で資格取得届を提出することで、年金事務所側で番号を照会して処理してもらえます。
雇用保険被保険者番号が不明な場合も同様に、マイナンバーを記載することで対応可能です。
期限内に保険手続きが間に合わなかった場合
社会保険・雇用保険ともに、期限を過ぎても手続き自体は受け付けてもらえるため、遅延したことに気づいた時点で速やかに提出しましょう。
ただし、社会保険の手続きが遅れると、本人が入社して間がないタイミングで病院にかかるような場合、マイナ保険証の情報が古いままになっていると不具合が生じてしまいます。
実務では書類が揃った段階で、速やかに手続きを進めましょう。
内定辞退が発生した場合
内定辞退が発生した場合、会社側では速やかに以下の対応を進めましょう。
1つ目は、書類の返却・廃棄です。
回収済みの個人情報(マイナンバー・口座情報など)は、個人情報保護の観点から、速やかに適切な方法で廃棄または返却しましょう。
2つ目は、行政手続き取消に関する手続きです。
社会保険・雇用保険の資格取得届をすでに提出していた場合は、取り下げまたは資格喪失届の提出が必要になります。
提出先(年金事務所・ハローワーク)に連絡して確認しましょう。
3つ目は、法的な対応が必要なケースです。
入社直前での辞退があったことで会社側に損害が生じた場合、法的対応を検討するケースもあります。
ただし、こうした対応は大きなトラブルや企業の評判にも関わってくる可能性があるため、専門家に相談しながら進めることがおすすめです。
会社側で必要な入社手続きについてよくある質問

入社手続きについて、担当者の方が抱えがちな疑問をいくつかまとめました。
疑問を解消して、適切に入社準備を進めていきましょう。
Q.1 労働条件通知書と雇用契約書は両方必要ですか?
労働条件通知書は労働基準法に基づく交付義務があるため、必ず作成・交付しなければなりません。
一方、雇用契約書は法的な作成義務がない、任意の書類です。
ただし、雇用契約書は双方が署名・押印することで合意内容を明確にできるため、作成・締結することを強くおすすめします。
実務上は、雇用契約書兼労働条件通知書として1枚にまとめているケースも多いです。
Q.2 社会保険の加入手続きが遅れるとどうなりますか?
新しい資格情報が確認できないため、一旦10割負担扱いになるおそれがあります。
遡及して資格取得することになると、数ヶ月分の保険料の納付が必要となる場合があるため、遅延に気づいた時点で速やかに年金事務所または健康保険組合に連絡してください。
Q.3 パート・アルバイトでも入社手続きは必要ですか?
雇用形態にかかわらず、労働条件通知書の交付と法定三帳簿の作成は必要です。
また、一定の加入要件を満たす場合は社会保険・雇用保険の取得手続きが必要です。
「短時間だから手続き不要」ということはなく、加入要件を満たしているにもかかわらず手続きをしなかったことが後に判明すると、正しい時期に遡及して取得、保険料の納付・給与計算を修正するなどの作業が発生します。
加入要件に該当しないか、必ず確認しましょう。
Q.4 入社手続きを電子化することはできますか?
可能です。
労働条件通知書は2019年4月からFAX・Eメール・SNSメッセージ機能等による電子交付が認められており、雇用契約書も電子署名での締結が有効です。
ただし電子交付の場合には「労働者本人が希望していること」「出力可能な形式であること」等の要件を満たす必要があります。
社会保険・雇用保険の届出も電子申請が可能です。
クラウド型の労務管理システムを導入すれば、入社手続きの大部分をオンラインで完結させることもできるでしょう。
まとめ
入社手続きは、書類の準備・行政手続き・社内対応などが発生します。
特に社会保険・雇用保険の手続きは法令上の期限が定められているため、入社が決まった時点で逆算してスケジュールを組んでおくことが重要です。
「手続きに漏れがないか不安」
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