【2025年版】会社側の入社手続きとは?必要書類や準備物をチェックリストで解説

会社側の入社手続きでは、社会保険の加入手続きや雇用契約書の作成、マイナンバー管理など、多岐にわたるタスクをスムーズに進めるためには正確さと効率が重要です。
本記事では、入社手続きにおいて会社側が行うべきことや必要な準備物をわかりやすく解説します。新入社員や中途入社社員の入社手続きを正確に完了させるためのポイントをまとめていますので、ぜひご活用ください。

目次

会社側の入社手続きの準備

書類を交わす様子

入社手続きでは、会社側が準備すべき書類と内定者から提出してもらう書類が複数存在します。書類が不足していると手続きが遅れ、トラブルの原因になるため、事前に確認しておくことが大切です。ここでは、会社側が用意すべき書類と内定者に提出を依頼する書類をチェックリスト形式で解説します。

会社側が入社手続きに必要な書類

会社として準備すべき書類を以下にまとめました。
労働条件通知書や社会保険関連書類など、必須の書類は漏れがないよう確認しましょう。

労務関連書類□雇用契約書
□労働条件通知書
□就業規則またはその写し
社会保険・労働保険関連書類□健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届
□雇用保険被保険者資格取得届
税務関連書類□扶養控除等(異動)申告書
□(住民税特別徴収関連書類)
個人情報・マイナンバー関連書類□マイナンバー提供依頼書
□身元保証書

以下でそれぞれを具体的に解説します。

労務関連書類

書類の名称概要提出期限
雇用契約書労働条件や契約内容を記載し、労使で契約する書類入社時
労働条件通知書労働基準法で義務付けられ
ている書類
入社時
就業規則またはその写し会社のルールや労働条件を
定めた重要書類の写し
入社時

雇用契約書は労働契約法第4条に基づき、労働内容についてできる限り書面により確認することとされています。
契約内容に合意した証として、社員本人の署名を必ず確認しましょう。
労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、契約期間、就業場所、従事すべき業務の内容、賃金や労働時間、休日、休暇、退職に関する事項などを明示します。書面での交付が原則ですが、電子データでの交付も可能です。
就業規則の写しには、労働基準監督署に届出済みの最新版を用意し、入社オリエンテーションなどで配布するなどしましょう。就業規則の説明を怠るとトラブルの原因となるため、読み合わせや質問の時間を確保すると安心です。

参考:労働契約法第4条
参考:労働基準法第 15条第 1項|厚生労働省
参考:労働条件通知書|厚生労働省

書類の名称概要提出期限
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届社会保険加入のために健保組合や年金事務所へ提出入社日から5日以内に健保組合、年金事務所へ提出
雇用保険被保険者資格取得届雇用保険加入のためにハローワークへ提出入社日から10日以内にハローワークへ提出

社会保険や労働保険に関する手続きは資格取得要件に該当した場合、法定の期限内に必ず提出しなければなりません。特に健康保険や厚生年金、雇用保険の加入は、給与計算や福利厚生の基礎となります。
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届は、社員の年金手帳もしくは基礎年金番号通知書をもとに、基礎年金番号を確認しながら記入しましょう。
雇用保険被保険者資格取得届は、週20時間以上勤務し、31日以上の雇用見込みがある場合に提出が必要です。提出が遅れると給付金の支給に影響が出るため注意しましょう。

参考:2-1:従業員を採用したとき|日本年金機構
参考:事業主の行う雇用保険の手続き|厚生労働省
参考:雇用保険被保険者資格取得届|厚生労働省

税務関連書類

書類の名称概要
扶養控除等(異動)申告書所得税の計算に必要な書類
(住民税特別徴収関連書類)住民税の特別徴収を実施している場合、自治体への届出が必要

扶養控除等(異動)申告書は、所得税の計算に必要な書類で、扶養親族の状況を確認します。これがないと源泉徴収額が多くなるため、必ず初回給与計算前に確認しましょう。
また、所得税の特別徴収を実施している場合には住民税特別徴収関連書類が必要です。過去に所得があり普通徴収から特別徴収へ切替えるのか、前職から引き続き特別徴収をするのかの確認が必要となります。

参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

個人情報・マイナンバー関連書類

マイナンバーなどの個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。適切な収集と保管が義務付けられているため、管理体制をしっかり整備しましょう。

書類の名称保管方法
マイナンバー提供依頼書暗号化やアクセス制限などを実施し、適切保管
身元保証書身元保証に関する法律に基づいて管理する

マイナンバーは社会保険や税務手続きで使用するため、本人確認を徹底し、安全な方法で収集します。身元保証書は緊急連絡先が記載された書類であり、信頼性を高めるために保証人の署名を確認することが大切です。

内定者に用意してもらうもの

書類の準備

入社手続きをスムーズに進めるためには、内定者から以下の書類を確実に揃えてもらうことが重要です。

身分証明書類□住民票の写し
□運転免許証やパスポートのコピー
社会保険・雇用保険関連書類□基礎年金番号が確認できる書類
□雇用保険被保険者証
税務関連書類□源泉徴収票(前職分)
□扶養控除等(異動)申告書
マイナンバー関連書類□マイナンバーカードまたは
通知カードのコピー
銀行口座関連書類□給与振込口座届出書
その他の持ち物□印鑑や写真など

書類が不足していると手続きが遅れ、給与計算や社会保険加入がスムーズに進まないため、事前に案内を徹底しましょう。
ここでは、内定者に入社時、準備してもらう書類や持ち物を、わかりやすく解説します。

身分証明書類

身分証明書類は、本人確認や住所確認のために必要です。事前に案内を徹底しましょう。

書類の名称確認事項
住民票の写し・発行後3か月以内である
・マイナンバーの記載がない住民票
運転免許証やパスポートのコピー・最新の情報に更新済みか確認が必要

住民票の写しは、住所確認のために必要です。
運転免許証やパスポートのコピーは、本人確認書類として利用します。また、特に重要な契約や保証書類の押印が必要な場合などには印鑑登録証明書が必要な場合があります。

社会保険・雇用保険関連書類

入社手続きでは、社会保険や雇用保険に関する書類が必要です。特に基礎年金番号や雇用保険番号は、正確に確認することが求められます。

書類の名称具体例
基礎年金番号が確認できる書類・基礎年金番号通知書
・年金定期便
・過去に発行された年金手帳
雇用保険被保険者証など・雇用保険被保険者証
※紛失している場合には、前職に問い合わせるか、ハローワークでの再発行が可

基礎年金番号は、社会保険(厚生年金)の加入手続きに必要です。
2022年4月からは年金手帳の発行が廃止され、基礎年金番号通知書が発行されるようになりましたが、基礎年金番号を確認できる書類を内定者に用意してもらう必要があります。もし、基礎年金番号通知書や年金手帳がない場合は、本人が年金事務所に再発行を依頼するよう案内しましょう。年金事務所に行けない場合でも、郵送やオンラインでの手続きが可能です。

雇用保険被保険者証は前職で雇用保険に加入していた場合に発行されるものであり、基本的には前職の会社から受け取っています。雇用保険被保険者証を紛失している場合には、前職に問い合わせることが一般的ですが、前職で再発行が難しい場合は、ハローワークでの再交付手続きも可能です。番号は喪失確認通知書、離職票などでも確認できます。

参考:基礎年金番号・基礎年金番号通知書・年金手帳について|日本年金機構

税務関連書類

書類の名称概要
源泉徴収票(前職分)前職での収入や控除情報を確認するために必要
扶養控除等(異動)申告書所得税の計算に使用する

源泉徴収票は前職がある場合に必要な書類であり、年内の転職の場合には提出してもらう必要があります。
扶養控除等(異動)申告書は、所得税の計算に直結するため、提出がないと所得税が高額になるため忘れず案内することが大切です。

マイナンバー関連書類

マイナンバーは、社会保険や税務手続きに必要ですが、重要度の高い情報であるため、取り扱いには細心の注意が必要です。安全管理措置を徹底し、不要になったマイナンバー情報のコピーは大切に廃棄しましょう。

参考:社会保障・税の手続書類へのマイナンバー(個人番号) の記載について、事業主・従業員の皆さんの ご協力をお願いします。|厚生労働省

銀行口座関連書類

賃金は労働基準法第24条で「通貨」で払わなければならないとされています。ただし本人の同意があれば口座振込も可能です。その場合は同意書を取って、銀行口座情報を事前に確認する必要があります。口座情報の記入用のテンプレートがある場合には、忘れず案内しておくことが重要です。また、会社によっては通帳のコピーやキャッシュカードのコピーを求める場合もあります。

その他の持ち物

内定者に案内する場合があるその他の持ち物には、印鑑や写真などが挙げられます。
入社日当日に印鑑や写真、筆記具などが必要な場合には、書類とあわせて案内しておくと内定者が失念するリスクを軽減できるでしょう。

会社側の入社後の手続き

入社手続きは、内定者の入社前だけでなく入社後も重要な業務が続きます。
ここでは、入社後に会社側が対応すべきポイントについてわかりやすく解説します。

法定四帳簿の作成

労働基準法では、企業が労働者を雇用した際に作成すべき帳簿として、法定四帳簿の作成が定められています。法定四帳簿は次の4つです。

● 労働者名簿
● 賃金台帳
● 出勤簿(タイムカードでも可)
● 年次有給休暇管理簿

これらの帳簿は、労働基準法第108条や労働基準法施行規則第54条で作成義務が定められており、正確に管理・保管しなければなりません。また、年次有給休暇管理簿は平成31年4月から新しく追加されています。帳簿を適切に管理することで、労務トラブルを防ぎ、法的リスクを予防できます。

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインについて|厚生労働省
参考:労働基準法で規定された代表的な4帳簿|厚生労働省

マイナンバー管理と取り扱い

マイナンバーは、社会保険や税務手続きにおいて必要不可欠な情報ですが、厳重な管理が求められます。

マイナンバー法は事業主の規模に関わらず適用されるため、すべての事業主が個人情報の保護措置などを講じる必要があります。

参考:よくある質問:民間事業者における取扱いについて|デジタル庁

会社側の入社手続きで気をつけたいポイント

書類

入社手続きにおけるトラブルの多くは、書類の不足や不備、提出期限の遅れに起因しています。そのため、チェックリストを作成するなどで入社日前の準備を行うことが重要です。
ここでは、会社側の入社手続きで気をつけたいポイントを解説します。

チェックリストの作成などで事前に準備する

入社前の準備として、必要書類のリスト化とチェックリストの作成が欠かせません。これにより、必要書類の漏れや手続きの遅れを防ぎ、入社日当日の混乱を回避できます。

入社後のサポートも重要

手を差し出すビジネスマン

入社後の手続きでは、法定四帳簿の作成とマイナンバー管理が大きなポイントです。
これらに不備があれば、労働基準監督署の調査時に指摘を受けるリスクがあります。特に、年次有給休暇管理簿は平成31年4月から新たに追加されたため、記録漏れがないか確認が必要です。

マイナンバーの管理においても、収集や保管方法に注意が必要です。情報漏えいや不正利用が発生すると、企業イメージが損なわれるだけでなく、法的リスクも伴うため、適切な管理体制の構築が不可欠となります。

まとめ

入社手続きは負担がかかりますが、適切な準備と正確な手続きが、従業員の信頼と働きやすさを支える基盤となります。その年ごとに最新情報をキャッチアップしながら、適切に対応していくことがミスを予防するうえで重要です。
本記事で紹介したチェックリストやポイントを活用し、入社手続きをスムーズかつ確実に進めましょう。

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