代休は無給か?有給か?

皆さんの会社に「代休」の制度はあるでしょうか?
「代休」という言葉はその名のとおり「代わりに休む」ことを意味しています。
何に対する代わりなのかといえば、休日労働に対する代わりです。

さて、この代休を与えた日は無給でしょうか?それとも有給でしょうか?
皆さんの会社はいかがでしょうか?
今回はこの疑問についてみていきたいと思います。

目次

1.そもそも代休とは何か

先にも書いたとおり、代休とは休日労働をした代わりに休ませることです。代休については、労働基準法による定めはありません。したがって、任意の制度となります。
代休と併せて振替休日について相談を受けることがありますが、その違いについては下記の記事を参考にしてください。

>>意外と知らない!?振替休日と代休の違い

代休は、休日労働をさせた後に事後的に与えるものです。主に休日労働による疲労を回復することを目的として与えることが多いのではないかと思います。
この代休は、労働日に使用者が一方的に就労を免除することをいいます。労働日に与えるものなので、「休日」ではなく「休暇」となります。休暇ですので、代休を与えた日の賃金の取扱いについて定める必要が出てきます。代休で休んでいるのだから当然に無給となるというわけではない点に注意が必要です。「理論的には、労働者が代休を取得しても、それは使用者の一方的な就労免除にすぎず、賃金が発生することになる」(石嵜信憲編著『労働時間規制の法律実務』(中央経済社、2022)420頁)ため、代休を無給とするためにはその根拠を定める必要があります。

給与計算では、代休を与えた日について控除していないケースが見られます。これは代休が「有給」であることを意味しています。体を休めるための代休を会社が恩恵的に有給で与えているということになります。
一方、代休を与えた日を無給とする場合は、代休日について代休控除をする必要があります。この代休控除は時給の1日分を控除します。そうすることで、結果的に休日労働した日については、法定休日労働であれば0.35,所定休日労働で法定労働時間を超えた時間外労働の場合であれば0.25の割増分が残ることになり、時給分の1.00は代休控除により相殺される形になります。

ところで、代休は無給のつもりだったのに、実際の運用では給与計算で代休控除をせずに有給扱いとなっていたといった場合、これを無給の取扱いに変更することができるかが問題となります。実質的に有給から無給に変更することは、労働条件の不利益変更の問題に関わってきます。就業規則(賃金規程)の定めの有無や内容、これまでの運用の状況などを確認し、変更の必要性や合理性などを検討する必要が出てくると考えます。

2.就業規則の規定例

代休を就業規則に定める場合の規定例として、以下のようなものが考えられます。

(代休)
 第●条 第〇条の休日に労働させた場合は、会社の業務上の判断により、代休を与えることがある。
2 前項の代休を与えた日については無給とする。ただし、当該代休が付与された場合、法定休日労働については休日割増賃金のうち割増賃金(0.35)、時間外労働については時間外割増賃金のうち割増賃金(0.25)のみを支払う。
3 代休を取得しようとする従業員は、取得を希望する日の少なくとも〇労働日前までに届け出るものとする。ただし、業務の都合によりやむを得ない場合は、代休の取得を希望した日を変更することがある。

第1項では、代休が会社の制度としてあること、代休は会社の判断で付与することを定めています。

第2項では、代休が無給であること、休日出勤による休日労働及び時間外労働については割増分のみ支払うことを定めています。なお、割増分のみの支払いとなるのは代休控除により時給分を相殺された結果によるものですので、休日出勤日と代休日が異なる給与計算期間におよぶ場合は、休日出勤に対する割増賃金と時給分の賃金をいったん全額支払い、代休を取得した給与計算期間で時給分を代休控除することになります。

第3項では、代休の手続について定めています。従業員が取得を希望した日に業務上の都合がある場合は、取得希望日を変更することについて変更権を規定しています。

3 まとめ

代休は、休日労働による疲労回復などを目的とする恩恵的な制度といえます。労働基準法に定めのない任意の制度であるため、代休を無給とするのか有給とするのかは会社の定めによります。労働義務のある日(労働日)に使用者が一方的に就労を免除する制度ですので、当然に無給となるわけではありません。無給とするためには就業規則にその取扱いについて定め、従業員との間で包括的同意を得ておく必要があります。

会社としては、従業員のためを慮って代休を与えたのに、代休が無給であることを従業員が認識していなかったためにトラブルを招くことにもなりかねません。任意の制度だからこそ、その取扱いについてはしっかり定めることが大切です。

執筆者

社会保険労務士法人飯田橋事務所
社会保険労務士・産業カウンセラー  横島 洋志 

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