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どう書けばいい?? 36協定の「時間外・休日労働をさせる必要のある事由」欄(1/2)


目次[非表示]

  1. 1.私が見てきた実情
  2. 2.1.で見てきた実情の問題点
  3. 3.何を書くことを求められているのか?



そろそろ4月ですね。多くの会社では、年度の始まりということで36協定が新しい年度のものになるのではないでしょうか?労働者代表を選任してもらったり、協定書類作ったり…。まして、去年に引き続き36協定の書式が変更されます。※1

※1:4/1以降始期の36協定書式が新しくなる件。協定届だけとして使う場合、押印省略可(協定兼ねる場合は不可)・従業員代表選出についてのチェックボックスが追加、といった内容ですが、本記事では詳細には触れません。

 そんな36協定の様式はA4の横型1枚(特別条項なし) or 2枚(特別条項あり)ではありますが、自社に適合して記載するのは大変なのではないでしょうか?なんとなく労基署が配布しているパンフレットに似せてはみたものの、あまり実務の実情とマッチしていないと見受けられるものを多く見てきました。

 本記事では、そんな36協定の

 ①「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」・「休日労働をさせる必要のある具体的事由」(以下、「具体的事由」)

 ②「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」(以下、「臨時的事由」)

①について考えていきたいと思います。



私が見てきた実情

「具体的事由」

私が見てきた中では、「緊急の顧客対応で必要なとき」や「月次決算のため」のようにある程度具体的に書いてあるものもあれば、「業務の繁忙及び臨時の業務に対応するため」のようにそれらしい文言ですが具体的なのかよく分からない事由が書いてあり、実態に即しているか疑問が残るケースが多いです。

「臨時的事由」

「トラブル発生への対応」や「顧客の緊急要請」といったように臨時的で具体的な事由が書いてある企業が多く、実態に即しているように見受けられます。



1.で見てきた実情の問題点

 1.で実例を挙げましたが、御社ではいかがでしょうか?概ね、似たような感じになっているのではないでしょうか?厚労省のパンフレットにも似たように書いてあり、何が問題なのでしょう?それは、36協定書いた事由時間外労働をさせる場合のみ、36協定の効果である、免罰的効力が発生するからということに関係します。※2・※3

※2:36協定の免罰的効力:労働基準法36条に定める協定(=いわゆる36協定)を締結し、行政官庁へ届け出ることで、法定時間外、法定休日労働をさせても労働基準法違反に問われないという効力。

※3:労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)

 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日労働させることができる

② 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

〔中略〕

 労働時間を延長し、又は休日労働させることができる場合


 上記を踏まえると、36協定の「具体的事由」・「臨時的事由」は以下の①・②を満たす必要があります。

①時間外労働等をさせる必要のある事由を網羅しないといけない

②具体的に書かないといけない

 1.で挙げた「具体的事由」、上記を満たしていますでしょうか?整理してみましょう。

「緊急の顧客対応で必要なとき」や「月次決算のため」

⇒きわめて具体的であり、②は満たしていますが、実態としてそれだけが理由ならいいですが、普通に考えればそれだけが事由ではないはずですので、①は満たしていませんね。会社によっては①を満たすために、別紙で「具体的事由」の一覧を作り、何ページもつけていることもあります。

「業務の繁忙及び臨時の業務に対応するため」

⇒業務の繁忙であれば業務を調整すればいいと判断される恐れがあり、臨時の業務は幅が広すぎて具体的であるとは判断されない恐れがあり、なぜその日の中で時間外等を行わせる必要があるのか疑問が残り、①・②ともに満たしているとは言えないのではないでしょうか。

 一方、「臨時的事由」については、臨時的に時間外労働等が多くなる事由は限られたものですし、実情に即した事由が書かれているようなので、特段問題ないと考えられます。

 普段意識することはないでしょうが、例えば労使トラブルになった際、そもそも36協定自体にない事由で残業が横行していて違反だ!という話にならないとも限りません。適切な「具体的事由」・「臨時的事由」を定めておくことが必要になります。




何を書くことを求められているのか?

 基本に立ち返り、協定の様式を見てみると以下のように書かれています。

「具体的事由」

⇒それぞれの項目名は、「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」・「休日労働をさせる必要のある具体的事由」・協定の様式裏面の記載心得に記載なし。

「臨時的事由」

⇒項目名は、「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」・協定の様式裏面の記載心得に記載あり。記載心得には


「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に記入すること。なお、業務の都合上必要な場合、業務上やむを得ない場合等恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを記入することは認められないことに留意すること。」


とあります。時間外労働等が必要な状態で、臨時的に時間外労働の上限を追加する場合であり、そのために必要な臨時的で具体的な事由とされており、それを書けばいいと分かります。

 「臨時的事由」については、どのようなことを書けばいいのか細かく書かれているにも関わらず、「具体的事由」については、より日常的な時間外労働等の免罰的効力を発生させる根拠になるにも関わらず、どう書くべきか協定の様式裏面の記載心得に何も書いていないのです。

 御社では、36協定に「具体的事由」を2.の①・②を満たす形で記載出来ていますでしょうか?


次回の記事『何を書けばいい?? 36協定の「時間外・休日労働をさせる必要のある事由」欄(2/2)』では、「具体的事由」についてどう書けばいいのかを考えていきます。

永井 健太郎

永井 健太郎

社会保険労務士 金融・建設会社での営業・経理・労務経験を経て、平成28年に社会保険労務士の資格を取得。