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新型コロナウイルスの感染・感染が疑わしいケースの傷病手当金申請の注意点(2/3)

前回の記事『新型コロナウイルスの感染・感染が疑わしいケースの傷病手当金申請の注意点(1/3)』では、傷病手当金の概要、従来の手続きの流れ、従来の手続きと異なる点についてお話ししましたが、今回は2020年3月6日に掲載された協会けんぽの「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A」のポイント解説を中心にお話ししていきたいと思います。


目次[非表示]

  1. 1.Q&Aのポイント解説
  2. 2.傷病手当金の支給額
  3. 3.会社の健康保険に加入していない人は?




Q&Aのポイント解説


協会けんぽの「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給に関するQ&A」で、

まず≪Q1≫では、実際にコロナウイルスに感染した場合であって療養のため労務に服することができない場合に傷病手当金が支給されることを記載し、

次に≪Q2≫では、自覚症状がない場合であっても、検査の結果新型コロナウイルスの陽性判定が出て、療養のため労務に服することができない場合も「傷病手当金の支給対象となりうる」としています。

≪Q3≫では、発熱などの自覚症状がある場合(Q2は自覚症状がない場合)であって、自覚症状があるため自宅療養をおこなっており、労務に服することができないケースであっても「支給対象となりうる」としています。

≪Q4≫では、Q3の状態の判断として

  ・風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いている

  ・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある

いずれかに該当する方を「支給対象となりうる」対象者としています。

※高齢者や基礎疾患のある方は上記の状態が2日程度続く場合も対象



≪Q4≫のA

『(前略)やむを得ない理由により医療機関の受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの(中略)労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等により、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとする。

として、医師の証明がないケースであっても、保険者(=この場合協会けんぽ)で労務不能と認めた場合は支給があり得るとしています。

≪Q5≫では自覚症状があり自宅療養を行っていた方が、一旦は『帰国者・接触者相談センター』に相談したものの、体調悪化等でその後結局医療機関の受診ができず回復した場合の取扱いについても要件を満たせば『支給対象となりうる』こととし、

≪Q6≫ではコロナウイルス感染の症状が出ていたので療養していたが、結果として他の疾患だった場合の取扱いについて他の疾患であって労務不能と判断された場合は『支給対象となりうる』と回答しています。


≪Q1≫ と ≪Q2≫ , ≪Q6≫ ・・・・・ 医療機関を受診している

≪Q3≫ ~ ≪Q5≫ ・・・・・ 医療機関を受診していない

という大きな違いがある中で


今回のような取り扱いとなった経緯として、傷病手当金の医師の証明を求めて感染者でない人までが医療機関に押し寄せ、医療機関の機能が麻痺することを回避する狙いと、医師の証明をもらうために医療機関を受診する・しようとすることで、実際にコロナウイルスに罹患していない人が病院や通院のための移動で感染するリスクを回避する狙いがあると想定できます。


同Q&Aの≪A5≫で『医療機関への受診を行うことができず、医師の意見書を添付できない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等により、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとする。』とあるように、感染リスクの回避策として本来の流れを取らない・取ることが難しいケースに対しても支給対象としようとする措置であることに留意し、正しい運用が行われず、この取扱いが廃止とならないよう、皆が適切な対応をすることが求められています。


その他の判断基準としては≪Q7≫で、事業所内でコロナウイルス感染者が出たことで、事業所全体を休業した場合の感染者以外の被保険者については「被保険者が労務不能と認められない限りは対象外」となっていますので注意が必要です。

≪Q8≫では家族が感染し濃厚接触者になった等の事由において、被保険者本人が休暇を取得した場合について、本人(=被保険者を指します)が労務不能と認められるケースに該当しない限りは、支給対象とならないと記載しています。

以上、抜粋しての紹介でしたのでぜひQ&Aもご一読ください。



傷病手当金の支給額


支給額:

支給開始日以前の12ヵ月の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に

相当する額の3分の2に相当する額


(例)標準報酬月額が28万円の場合

   (280,000×12月)÷12月÷30日=9333.3333 → 9,330円

(1の位で四捨五入)

9,330円×2/3= 6,220円(支給日額)

      (2/3をした額に小数点があれば小数点第1位で四捨五入)

医師の指示により休業した期間は2020/3/10~2020/3/31の22日間

連続した最初の3日間は待期期間であり支給されないため、

6,220円×19日=118,180円が支給見込み額となります。

※土日祝が休日の被保険者であっても傷病手当金は支給対象となります

※被保険者期間が12ヵ月に満たない者については

 ①被保険者期間における標準報酬月額の平均額

 ②被保険者の属する保険者の標準報酬月額の平均額

 のいずれか低い額が算定の基礎となります


支給期間:

支給期間は他の傷病と同様に考えます。

療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日

から労務に服することができない期間 (最長1年6月まで)

※1年6ヵ月分支給されるのではなく、1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間が

あり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合の復帰して

いた期間についても1年6ヵ月に含まれます。


※補足

次回の「新型コロナウイルスの感染・感染が疑わしいケースの傷病手当金申請の

注意点(3/3)」では、国民健康保険・後期高齢者医療被保険者等の場合についての注意点に触れていきますが、こちらは適用期間が定められております。



支給額の計算は、その方の実際の直近の賃金で算出するのではなく、標準報酬月額(社会保険の等級)を用います。具体的な計算例・注意点が協会けんぽのHPにとても分かりやすく記載されていますので、ぜひこちらでもご確認ください。


また、ここでは触れていませんが、傷病手当金の支給と他の制度との支給調整があったり、申請についての注意点がまだいくつかあります。

申請書の記載について聞きたい、その他注意点などを確認しておきたいといった場合は、ぜひ当事務所の事務所相談会をご利用ください。



会社の健康保険に加入していない人は?


今回、2020年3月6日付で協会けんぽHPに掲載された『新型コロナウイルスに係る傷病手当金の支給に関するQ&A』を中心に説明をしましたが、今回の対象者は【健康保険の被保険者本人】であり、75歳となり会社の健康保険の資格を喪失したが引き続き勤務している方、被保険者の家族や、勤務先で加入要件を満たさず勤務先の健康保険に加入していない方は対象外となります。


2020年3月10日に厚生労働省から発表された「事務連絡」書面によると、国民健康保険、後期高齢者医療制度等の方についても同様の取扱いがなされると決定しました。

次回「新型コロナウイルスの感染・感染が疑わしいケースの傷病手当金申請の注意点(3/3)」では、国民健康保険・後期高齢者医療被保険者等の場合についての注意点に触れていきたいと思います。

田口 温美

田口 温美

特定社会保険労務士。法律事務所勤務を経て平成27年入所。外国人問題、高齢者障がい者の問題にも積極的に対応する事務所での事務経験をベースに、現在は外国人、ミドル・シニア世代の労務管理を数多く対応。