いまさら聞けない!建設業の労災(労働者災害補償保険)。下請け、元請け、現場、倉庫、事務所!なにがどうなっている!

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こんがらがってしまう建設現場の労災。

こんがらがってしまう建設現場の労災。古くて新しい話題ではないでしょうか。


顧問先である建設会社の社長から電話がかかってきました。
社長「事故があったんだけど、どうしたらいい?」

まずは現状確認から…
社会保険労務士「どこでなにがあったんですか?」

社長「うちの倉庫がある場所で明日現場に持っていく道具を車に積んでいたんだが、車から飛び降りた時につまずいて足首をひねったらしいんだ」

社会保険労務士「そうですか。お怪我の状態はどの程度です?」

社長「捻挫程度だと思っていたが、何だか足の腱が切れたらしい。数か月仕事ができないらしい」

社会保険労務士「それじゃ、大けがじゃないですか!」

社長「そうなんだ。それで労災を使いたいんだが」

さて、ここからがこんがらがるところです…。

社会保険労務士「会社の倉庫の敷地内でお怪我したということですが、明日行く現場、というのは社長の会社が受けた元請け工事ですか?」

社長「いや。元請けはうちじゃないよ。」

社会保険労務士「その場合、元請け会社の労災になりますよ」

社長「え?どういうこと?うちの倉庫がある敷地で怪我をしたからウチの労災でしょ」

社会保険労務士「現場に関係のない、単なる倉庫の掃除とか、片付け中の事故であれば社長の会社の労災なんですが、明日の現場に行くための準備であり、しかも社長の会社の元請け工事ではない、という場合には元請け工事会社の労災扱いになるんです」

社長「そりゃ困るなあ!元請け会社には、うちの労災で処理しますって言っちゃったよ。」

社会保険労務士「たとえば今の状況で労災申請した場合、監督署からこの事故が起きた時に行くはずだった元請け工事の工事名と元請け金額を教えてくださいって問い合わせがありますよ。」

社長「……」

社会保険労務士「このまま申請するとかえって元請け会社に迷惑をかけることになりかねません」

社長「わかった。元請け会社に話してみるけどあんまり気が進まないなあ。何とかならないの?」

社会保険労務士「以前はこういう案件が多々あり、下請け会社が労災処理するといういわゆる労災隠しっぽいのが問題になりました。今回の事案のように勘違いや知識不足から結果的に労災隠しになってしまうケースもあるので正しい理解が必要です。」

社長「現場で労災事故を起こすと次に仕事をもらえなくなるかもしれないじゃないか。」

社会保険労務士「仕事上のパワーバランスはありますよね。ただ、そういったことが要因で労災隠しが横行したため元請け会社への指導が強化されました。もともと元請け現場での労災保険料は元請け会社が支払っています。下請け会社では労災保険料を払ってもいない現場での事故で給付を受けることになってしまいます。元請け会社だって労災事故の責任が元請けなのか下請けなのか正しい理解があったかと言えばあやしい。常識的に考えれば今回の事故のように下請け会社の敷地内で起きた事故がなんで元請け会社の労災事故になるの?というのが普通といえます。」

社長「それじゃ、元請け会社に相談してみるがこれから具体的にどう進んでいくの?」

社会保険労務士「責任関係がはっきりすれば、あとは書類上の問題です。事故の状況を労災の申請用紙に記入して元請け会社の印を押してもらいます。申請用紙に記入する労災保険番号も元請けの番号を記入します。」

この後、社長は社会保険労務士の話をもとに元請け会社に相談しました。元請け会社ではスムーズに、うちの労災で処理します、と言われたそう。やはり労災隠しに関する正しい知識や指導が行き渡ってきたようです。

この記事を書いた人

社会保険労務士 植田 秀樹

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