ハローワーク(公共職業安定所)は、求職者や求人事業主に対して、さまざまなサービスを無償で提供する、国(厚生労働省)が運営する総合的雇用サービス機関です。
ハローワーク求人は掲載が無償なので、とりあえず出しておこうと利用する事業所がとても多いです。
そのような数あるハローワーク求人の中から、求職者の目に留まる“魅力的な求人票”は、どのように書けば良いのでしょうか。
求人票に記載すべき事項やルールは、労働基準法や職業安定法、男女雇用機会均等法などの
法令で具体的に定められており、募集企業側はそれらを遵守した求人票を作成することが求められます。
この記事では、ハローワークに提出する求人票で自由記載欄の書き方を工夫することで勝負できる8つの箇所について具体例を交えながら解説します。“企業の魅力を求職者に伝える求人票”の書き方を知りたい人事担当者様はぜひ参考になさってください。
ハローワークの手続きの流れ

- 求人の申込(ハローワークへの登録)
- 求人情報の公開
- 求職者紹介・選考
- 採否決定・通知
1.求人の申込み(ハローワークへの登録)
求人を申し込むには、二通りの方法があります。
①ハローワークに出向いて手続きを行う
ハローワークで事業所登録を行い、事業内容や雇用保険番号などを登録します。求人情報はハローワーク内の申込用紙に記載又はパソコンで入力し、窓口で申し込み手続きを行うことが可能です。
②ハローワークインターネットサービスで手続きを行う
まず、事業所登録(仮登録)を行い、求人者マイページを開設します。開設後、求人者マイページにログインし、求人情報を登録します。
2.求人情報の公開
ハローワークで受理された求人情報は、ハローワーク内の端末やインターネット上で公開され、求職者に提供されます。
3.求職者紹介・選考
求職者が応募(求人への紹介を希望)すると、ハローワークから企業へ紹介の連絡が入ります。
①窓口紹介
ハローワークから、求人情報の確認や面接日時などの調整連絡が会社へきます。
②オンラインハローワーク紹介
求人者マイページを開設している企業を対象に、求人者マイページに紹介状が発行され、応募があった旨が通知されます。マイページのメッセージ機能や電話により会社から求職者の方に直接連絡をとり、面接日時の取り決めを行い、面接・選考となります。
4.採否決定・通知
選考後、採用・不採用の結果を応募者に通知し、ハローワークにも報告します。
採用者がすべて決まった場合、応募者が多数となった場合、求人の公開が不要になった場合は、求人を申し込んだハローワークに連絡しましょう。
ハローワーク求人票の書き方のポイントと具体例

ハローワークでの求人票作成において、求職者に明確で魅力的な情報を伝えることは、採用活動の成功に直結します。
以下では、8つの自由記載欄の書き方を工夫することで、より多くの求職者の目に留まり、応募意欲を高めるための具体的な書き方のポイントを解説します。
ハローワークの求人票(サンプル)
① 職種
② 仕事内容
③ 必要な経験
④ 必要なPCスキル
⑤ 就労に関する特記事項
⑥ 事業内容
⑦ 会社の特徴
⑧ 求人に関する特記事項
求人票の各項目には字数制限があります。半角は使用できず全て全角です。記号や空白も1文字としてカウントされますので注意してください。
①「職種」は本のタイトルと同じ、興味を引く内容にする

◆28文字(28文字×1行)記載可
求人検索では下記のように、求人票の一部が表示されます。
求職者が仕事を探すときは、まず「職種」を見ます。職種は本に例えるとタイトルと同じです。
本もタイトルを見て面白そうだな、と興味を持ったら、次にどんな内容だろうと手に取ります。求人票も同じで「職種」が求人票のタイトルの役割をしています。ですから他社と同じような「職種」の記載では求職者の目に留まりません。
その他大勢の求人票として見逃されてしまい求人票を表示してもらえません。
ここは是が非でも求職者の目に留まり、求人票を開いてもらえるよう工夫が必要です。
「職種」は、28文字入ります。この欄をフルに活用するために、職種名だけではなく、会社の特徴や最寄り駅なども合わせて記載しましょう。
「接客 調理補助/賄いあり/週2日2時間からOK/シフト制」 28文字
「採用担当/土日祝休/残業なし/在宅勤務可/〇〇駅徒歩5分」 28文字
このように、職種欄を見るだけで、求職者は色々な情報を得ることができます。
②「仕事内容」は具体的かつ詳細に記載する
◆360文字(30文字×12行)記載可
仕事内容は求職者の関心が高い項目です。入社後どのように働くのか、具体的にイメージを描けるように記載すると応募に繋がる確率は高くなります。
例えば、採用担当業務であれば「中途採用の計画立案や応募者対応、入社までのフォロー業務など」ではなく、業務内容を具体的に見やすく箇条書きにし、求職者の関心を引くようにします。ここで気をつけたいのが、初めの3行しか求人検索には表示されないということです。一番訴求したい内容は初めの3行に書くことがポイントです。
1行目 ・中途採用計画の立案(他部署のヒアリングやフィードバック含) 30文字
2行目 ・求人媒体への原稿作成および運用管理 18文字
3行目 ・応募者対応(面接スケジュール調整や採用後のフォロー業務) 29文字
・応募者対応(面接スケジュール調整や採用後のフォロー業務) 29文字
・紹介会社や求人媒体会社とのやり取り窓口業務 22文字
・入社後のフォローアップ業務 など 17文字
未経験者向けには簡潔でわかりやすく、経験者向けには専門用語を用いて具体性を高めるのが効果的です。
③「必要な経験等」や、④「必要なPCスキル」は具体的に示す
◆90文字(30文字×3行)記載可
「採用経験がある方」や「PCスキル(Excel・Wordが使える)」といった抽象的な表現は避け、具体的な内容を明記します。求めるスキルを具体的に記載することで、こちらが求めるスキルに達していない、といったミスマッチ採用を未然に防ぐことができ、適した人材の応募率が向上します。
●具体例
必要な経験等 | 採用業務経験3年以上。11文字求人媒体の原稿作成経験がある方を優遇。19文字 |
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必要なスキル | ExcelでVLOOKUP関数やピボットテーブルを日常的に使用。32文字 |
⑤「就労時間に関する特記事項」、パートタイム求人は労働時間を柔軟に記載する
◆120文字(30文字×4行)記載可
パートタイムで働くことを希望する人は、家庭の事情等で働き方に制限がある人が多くいます。中には、隙間時間を利用して数社掛け持ちで働いている人もいます。
そのためパートタイム求人は固定的な労働時間ではなく、「週1日・2時間~要相談」など、柔軟に対応できることをアピールすることで応募の確立が高くなります。
「週〇日以上〇時間~で応相談」「学校行事の優先が可能」「他店と掛け持ちOK」など、相談可能な条件を明記しましょう。
決まった曜日、時間だけですと、求職者が「いいな」と思っても「希望する曜日・時間ではない」と応募を諦めてしまうことがあります。応募の入口を広く持つと応募が増えやすくなります。
「週2日以上、1日2時間から勤務可能。勤務時間帯は以下の中から相談に応じます。午前シフト(9:00~13:00)、午後シフト(13:00~17:00) 」74文字
「フルタイム勤務も相談可能です。」 15文字
「学校行事や家庭の都合、習い事など、事前の相談に応じます。」28文字
⑥「事業内容」は、堅苦しい言葉は使わず、明確・簡潔に表現する
◆90文字(30文字×3行)記載可
「事業内容」は事業所登録で行いますので毎回書換える必要はありません。登録してから一度も書換えていないという事業所も中にはあります。しかし、今の事業内容と違っている場合もありますので、定期的に見直すことは必要です。
「事業内容」は名刺みたいなものです。そこを見ればどういう会社なのかが分かるように記載するのがポイントです。求職者は会社がどのような事業を行なっているのか知りません。取引先に説明するような言葉や専門用語は使わず、求職者がイメージできるように分かりやすい言葉で表現しましょう。
「◎和風創作料理店 8文字
契約農家から仕入れた朝取り野菜、旬な魚、国産牛肉など 26文字
安心した食材を提供することにこだわったお店です。」 24文字 合計58文字
⑦「会社の特長」は、従業員目線で記載する
◆90文字(30文字×3行)記載可
「会社の特徴」も事業所登録で行うので、事業内容と同じく定期的に見直す必要があります。
「会社の特徴」は、広く社会へアピールする内容ではなく、求職者へアピールする内容に変えると、会社をより身近な存在に感じてもらえます。「従業員目線で」とは、従業員にとってメリットと感じるかどうかで判断するという意味です。職場の雰囲気や従業員の様子、会社の将来のビジョンなどを、自社の言葉で表現することで他社との差別化が図れます。実際に働いている従業員に「職場の特徴」を聞いてみると、思ってもみなかった良い答えが返ってくるかもしれません。
「他部署とも交流があり、とても風通しの良い職場です。 25文字
チーム制を採用しているので急な休みも安心して取得できます。 29文字
年次有給休暇取得率100%、子育て世代も多く働いています。」 29文字 合計83文字
⑧「求人に関する特記事項」で詳細な魅力を伝える
◆600文字(30文字×20行)記載可
特記事項欄は、仕事内容や企業の魅力を詳細に記載する絶好の場です。「現在働いている社員の例」「仕事のやりがい」「求める人物像」 などをエピソードを交えて具体的に記載することで、職種などに興味がある求職者の関心を集める効果が期待できます。さらに、「入社後のイメージ」を記載すると、自分がそこで働くイメージが描けるので応募の後押しに繋がります。
【仕事のやりがい】 9文字
「採用担当の仕事は、採用活動を通じて未来の仲間を迎え入れる重要 30文字
な役割を担っています。自分の提案やアイデアが採用され、成果に 30文字
つながったときの達成感は格別です。」 17文字 合計86文字
【入社後のイメージ】 10文字
「・入社後~ 先輩社員について営業先を回りOJTで仕事を覚えてもらいます。 36文字
・3年~5年 他部署の仕事も少しづつ覚え仕事の幅を広げてもらいます。 34文字
・5年以降 チームリーダーとして後輩の育成にも尽力していただきます。」 34文字 合計114文字
※30文字超は2行目に記載されます。
この項目は基本的に何を記載しても問題ないので、他の項目で書ききれなかったことや福利厚生などを記載すると、より求職者にアピールできます。
事業所の魅力を写真でアピール
ハローワーク求人も事業所登録で写真を載せることができます。
登録できる写真は10枚です。ハローワークインターネットサービスやハローワークで閲覧できます。掲載写真は、会社パンフレットや扱っている商品などでも良いですが、職場の写真を載せることで求職者に親しみやすさを伝えられます。視覚的にも会社を理解できるように、ぜひ写真を登録しましょう。
ハローワーク求人票の書き方に関する注意点

年齢制限
求人票において、年齢制限を設けることは原則として禁止されています。これは、年齢にとらわれず能力や適性を基準に採用を行うことで、公平な雇用機会を提供するためです。
ただし、例外的に年齢制限が認められる場合があります。
定年年齢を上限とする場合や法令による規定、若年層のキャリア形成を目的とする場合などです。
年齢制限を設けるには、法律で定められた条件に該当する必要があり、その理由を文書や電子媒体で明示しなければなりません。
法的な制約と禁止されている表現
求人票を作成する際には、職業安定法に基づき法的な制約を遵守し、誤解を生じさせる表現や虚偽の情報を記載してはなりません。具体的には以下の点に注意が必要です。
- 虚偽の表示
- 誤解を招く表現
- 業務内容の不正確な記載
- 給与の不明確な記載
契約社員の募集を正社員として記載するなど、実際には存在しない条件を記載することや、誇張された情報の掲載は禁止されています。
まとめ
求人票とは、企業が求職者に向けて自社の募集内容や雇用条件を正確に伝えるための重要な文書です。
ただし、単に情報を記載するだけではなく、職業安定法や労働基準法に基づいた適切な記載が求められます。
虚偽や誤解を招く表現を避け、給与の内訳や労働条件などを具体的に記載することが重要です。
企業が適切な求人票を作成することで、求職者との信頼関係を築き、優秀な人材の確保につなげましょう。