管理監督者は労働時間の把握義務の対象? 【働き方改革関連法施行で何が変わった?!シリーズその①】



平成30年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)では、8つの法律が改正しましたが、その1つに労働安全衛生法の改正があります。改正安衛法は今回の「労働時間の把握義務以外に「面接指導」や「産業医の機能を強化」等について改正がありましたが、今回は「労働時間把握義務について確認していきたいと思います。


さて、タイトルにある「管理監督者」は今回の改正で労働時間把握義務の対象になったのでしょうか?

答えは「YES」です。


また、施行については平成31年4月からとなっています。


目次[非表示]

  1. 1.労働時間把握義務改正のポイント
  2. 2.改正後の条文と通達
  3. 3.管理監督者性の判断


労働時間把握義務改正のポイント

「今回の改正で」というところが大きなポイントと言えます。改正前は管理監督者とみなし労働時間制の適用については、労働時間の把握義務となる対象者から除外されていました。平成29年1月20日策定のガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、


『対象となる労働者は、労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者』


と記載しています。


労働基準法第41条に定める者 ・・・管理監督者など

みなし労働時間制が適用される労働者

 ①    事業場外で労働する者であって、労働時間の算定が困難なもの(労基法38条の2)

 ②    専門業務型裁量労働制が適用される者(労基法38条の3)

 ③    企画業務型裁量労働制が適用される者(労基法38条の4)

ガイドラインの中で、『本ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要がありますので、使用者は過重な長時間労働を行わせないようにするなど、適正な労働時間管理を行う責務があります。』としつつも、対象から除くものとして、管理監督者とみなし労働時間制の適用を挙げていました。


改正安衛法では、労働時間の把握義務から対象外とされたのは、高プロ適用(高度プロフェッショナル制度の適用者)のみです。ただし、高プロ適用者については改正労基法の方で事業主に“健康管理時間”の把握に対する責務が定められています。(改正労基法41条の2第1項3号)


改正前はガイドラインだったものが、改正により法律として明文化されました。


改正後の条文と通達


■改正安衛法66条の8の3

「 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、

厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の

状況把握しなければならない。」


■通達 平成30年12月28日基発1228第16号 (抜粋)

問: 労働時間の状況を把握しなければならない労働者には、裁量労働制の適用者や

管理監督者も含まれるか。

答:  労働時間の状況の把握は、労働者の健康確保措置を適切に実施するためのもの

であり、その対象となる労働者は、新労基法第 41 条の2第1項に規定する業務

に従事する労働者(高度プロフェッショナル制度の適用者)を除き、

①    研究開発業務従事者

②    事業場外労働のみなし労働時間制の適用者

③    裁量労働制の適用者

④    管理監督者等

⑤    労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

 (昭和 60 年法律第 88 号)第2条第2号に規定する労働者(派遣労働者)

⑥    短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 (平成5年法律第 76 号)第2条に規定する労働者(短時間労働者)

⑦    労働契約法(平成 19 年法律第 128 号)第 17 条第1項に規定する労働

  契約を締結した労働者(有期契約労働者)

を含めたすべての労働者である。


                               

管理監督者性の判断

管理監督者に関する実務上の問題として多いのが、「管理職だから残業代は払う必要がない」としているケースです。管理職であっても、労基法の「管理監督者」に該当するとは限りません。労基法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、①職務内容②責任と権限③勤務態様④待遇などを総合的に勘案して判断します。単に管理職だからということで、残業代を支払っていないというケースは、残業代不払いの問題に発展していく恐れがありますので、まずは管理監督者性を否定する要素がないか、下記で確認してみましょう。


◇管理監督者性を判断する3要素◇

​​​​​​​1  ☑  経営者と一体的な立場で仕事している

2  ☑  出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない

3  ☑  その地位にふさわしい待遇がなされているか

参考出所:東京労働局「しっかりマスター 労働基準法‐管理監督者編‐」


また、割増賃金については、管理監督者については深夜割増賃金について支払わなければなりません。労基法上の管理監督者に該当している場合(=本当の意味で管理監督者に該当する場合)、労働時間・休憩・休日については適用がありませんが、深夜割増賃金有給休暇については、通常労働者と同様適用なります。深夜割増賃金を支払い、有給休暇を与える必要がありますので注意が必要です。



このように、労働時間の管理の重要性はますます高まっています。次回は、労働時間の管理における自己申告の有効について確認していきます。


自社の管理職が管理監督者に該当するか、管理監督者として扱っている者の給与体系について相談したいといったご相談は、当事務所開催の事務所相談会をぜひご利用ください。


田口 温美

特定社会保険労務士。法律事務所勤務を経て平成27年入所。外国人問題、高齢者障がい者の問題にも積極的に対応する事務所での事務経験をベースに、現在は外国人、ミドル・シニア世代の労務管理を数多く対応。