人事の年間スケジュールとは?業務別・月別にわかりやすく整理

人事業務の仕事内容はそれぞれの業務で年間を通じて必要な手続きや対応が異なるため、効率的なスケジュール管理が求められます。そのため、包括的な年間スケジュールを知っておくことで計画的に対応しやすくなることがメリットです。
本記事では、人事の主要業務ごとに年間スケジュールを解説します。

目次

人事と年間スケジュールに関する基礎知識

カレンダー

人事業務は採用、労務管理、給与計算、人材開発など多岐にわたり、時期ごとに発生する業務が異なるため、計画的に管理することが重要です。
ここでは、人事の年間スケジュールに関する基礎知識を解説を解説します。

人事の年間スケジュールが必要な理由

人事業務は、計画的なスケジュール管理が求められる分野です。
採用活動や給与計算、社会保険手続き、人材育成など、業務が多岐にわたるため、効率的な管理が欠かせません。特に、給与計算や年末調整、社会保険の手続きは法定期限が厳しく、ミスや遅延が企業リスクにつながります。
たとえば、年末調整が遅れると税務署への報告が間に合わず、企業の信用が損なわれる可能性があります。また、採用活動が計画通りに進まないと、欠員状態が続き業務が滞るリスクもあります。

こうした課題を防ぐためには、年間スケジュールを事前に策定し、役割分担を明確にすることが大切です。

人事の主な仕事内容

パソコンに向かい仕事している様子

人事部門では、以下のように社員の採用から労務管理、人材育成、評価制度の運用まで幅広い業務を担当します。

主な業務具体的な業務内容実施頻度
新卒採用・中途採用採用計画の立案、求人票作成、面接実施、内定通知、フォローアップ年間を通じて随時
給与計算・社会保険手続き月次給与計算、社会保険料納付、年末調整、労働保険更新、勤怠管理毎月・年次・随時
社員教育・研修新入社員研修、中途社員研修、階層別研修、リーダー研修、OJTプログラムの策定年1回・必要に応じて
人事評価・人事制度整備評価制度の運用、評価シート作成、昇給・昇格判定、評価フィードバック半期・年次

採用業務は、新卒採用と中途採用ではスケジュールや対応が大きく異なり、柔軟な対応が求められます。

人事業務の年間スケジュール

カレンダー

ここでは、人事業務を「採用」「給与・労務管理」「人材開発」に分けた年間スケジュールをわかりやすく解説します。

採用業務の年間スケジュール

採用業務は、新卒採用と中途採用で時期や内容が異なります。人材確保が企業成長に直結するため、採用活動を計画的に進めることが大切です。

新卒採用スケジュール

新卒採用は、長期間にわたる計画性と柔軟な対応力が求められ、採用計画の立案から内定者フォローまで一貫した管理が重要です。

業務内容ポイント
4月採用計画立案・予算確保採用人数やターゲット層を明確化
6月〜8月インターンシップ開催・エントリー開始学生との接点を増やし、企業理解を促進
10月内定出し・内定者フォローオンボーディング計画を立て、入社意欲を高める
3月入社準備・研修計画策定必要書類や研修プログラムを整備

新卒採用の第一歩は採用計画の立案と予算の確保であり、具体的には、以下の点を明確にします。

・採用人数やターゲット層の設定
・採用手法やスケジュールの検討
・採用予算の確保と割り振り

また、新卒採用ではインターンシップや説明会を通じた企業理解を深めてもらう工夫が欠かせません。採用計画を立てる際には、前年の採用実績や反省点を分析し、改善点を反映させましょう。競合他社の採用状況や市場動向をリサーチし、ターゲット学生のニーズを把握することも重要です。さらに、内定辞退リスクを減らすため、内定後フォローを徹底し、入社までのモチベーション維持を図りましょう。

中途採用スケジュール

中途採用は、欠員補充や事業拡大に伴う即戦力確保が目的となるため、迅速かつ柔軟な対応
が求められます。スケジュールは通年での対応が基本ですが、急募ポジションではスピード感を意識し、選考プロセスを効率化することが重要です。

業務内容ポイント
通年採用ニーズ確認・求人票作成欠員状況や組織戦略に基づき、求人内容を見直し
通年書類選考・面接実施スピーディな選考で内定辞退を予防
入社月前入社準備(書類確認・PC手配など)受け入れ態勢を整え、スムーズな初日をサポート

まずは採用ニーズを明確化し、欠員状況や事業戦略を考慮して以下のように求人内容を整理します。

・求めるスキルセットや経験年数を具体化
・採用方法の検討
・採用予算の確保とコスト管理

さらに、入社準備やフォローアップを徹底し、入社後の早期戦力化をサポートすることも欠かせません。応募者の評価ポイントを事前に整理し、スピーディーな意思決定ができる体制を整えることも重要です。候補者へのフィードバックを丁寧に行い、企業イメージを損なわないよう配慮しましょう。選考プロセス全体を通じて、迅速な連絡とコミュニケーション強化がポイントです。

給与・労務管理の年間スケジュール

給与計算や労務管理は、毎月のルーティン業務と年次業務があり、法定手続きが含まれるため厳格な管理が求められます。
特に、社会保険料率の改定や税制改正が頻繁に行われるため、最新情報をキャッチアップし、ミスのない対応を徹底することが重要です。
以下では、給与・労務管理の年間スケジュールを整理し、ポイントを解説します。

業務内容ポイント
毎月給与計算・社会保険料納付支給日や納付期限を厳守
7月1日~7月10日社会保険定時決定(算定基礎届提出)正確な給与データを基に、保険料を確定
6月1日~7月10日労働保険料年度更新手続き労働保険料を算出し、納付を完了
12月年末調整・源泉徴収票発行控除申請の確認と、正確な所得税計算

給与計算は人為ミスが発生しやすく、法改正にも影響を受けやすい業務です。
給与計算ミスや支給漏れが発生すると、従業員の不信感を招きかねないため、データ管理とチェック体制を徹底しましょう。社会保険定時決定は、4月から6月までの給与データを基に保険料を算定する手続きです。

算定基礎届を年金事務所に提出し、9月分からの保険料を確定させます。
社会保険料率や税制改正が頻繁に行われるため、最新情報をキャッチアップすることが重要となります。労働保険料(労災保険・雇用保険)は、毎年6月から7月にかけて年度更新手続きを実施します。前年度の賃金総額を基に、労働保険料を算出し納付します。
年度更新は電子申請が可能であり、労働保険電子申請システムを活用すると便利です。
労働保険の電子申請に関する特設サイトは、以下のとおりです。
参考:労働保険の電子申請に関する特設サイト

給与・労務管理に関して、年末調整や保険料の定時決定は期限が厳格なので、なるべく早めにスケジュールに組み込んでおき、電子真性などで負担を軽減することがミスの予防につながります。
参考:労働保険関係手続の電子申請について|厚生労働省

人材開発・教育の年間スケジュール

人材開発では社員教育を計画的に実施します。スキル向上とキャリア支援を行うことで、従業員満足度を高める効果が期待できます。新入社員から管理職まで、階層や役職ごとに適切な教育を実施することが重要です。

業務内容ポイント
4月新入社員研修・OJTスタート基礎スキルや企業理念を教育
6月フォローアップ研修配属後の課題解決やモチベーション維持を図る
10月管理職研修・リーダーシップ研修組織運営やマネジメントスキルを磨く
通年社内研修など自己学習支援や資格取得サポート

4月は、新入社員が入社するタイミングであり、基礎スキルの習得や企業文化の理解が中心となります。社会人マナーや業務知識の教育を行い、早期に職場に馴染める環境を整えることが重要です。配属後のフォローアップ研修では、実務経験を通じて生じた課題を解決し、主に新入社員のモチベーション維持を目的とします。

中堅社員には、業務改善スキルやリーダーシップ強化が求められます。現場力を向上させるために、実践的なケーススタディやワークショップを取り入れましょう。管理職には、チームマネジメント力やリーダーシップ能力が必須です業績向上を実現できるリーダーシップスタイルを確立させることが求められます。また、日々の業務スキル向上や自己啓発を支援するため、社内研修やオンライン学習を充実させることも人材開発に効果的です。具体的には、自宅学習が可能なeラーニングの導入やデジタルスキル研修などがあります。

人事の年間スケジュールに関する注意点

パソコンに向かい仕事している様子

人事の年間スケジュールを管理する際には、業務の特性や法定期限を正確に把握し、計画的に進めることが重要です。スケジュールが不適切だと、法令違反や業務トラブルに繋がり、企業リスクが増大します。ここでは、人事の年間スケジュールを作成・運用する際に注意すべきポイントを解説します。

法改正や制度変更に注意する

給与計算や社会保険手続きに関わる法制度は、毎年のように改正されるケースが多くあります。税制改正や社会保険料率の変更が頻繁に実施されるため、最新情報を確実にキャッチアップするには、社労士などの専門家との連携も重要です。

繁忙期の業務集中に備える

人事業務には、特定の時期に集中する業務が多く存在します。
例えば、年末調整や社会保険の定時決定、労働保険料年度更新などは、短期間で対応が求められるため、計画的なスケジュールを組んでいない場合には人的ミスが生じやすい状況となります。そのような事態を予防するためにも、業務の優先順位を明確化し、年間スケジュールを活用して計画的に進めることが重要です。

業務の抜け漏れを防ぐためのチェック体制

年間スケジュールは多岐にわたる業務が絡み合うため、抜け漏れが発生しやすいのが現実です。チェックリストを活用して抜け漏れを確認することで、労務管理や給与計算などの重要度が高く複雑な業務も正確に遂行しやすくなります。
チェックリストの作成では、月次・年次業務を体系的に管理することが重要です。給与計算や社会保険料納付、源泉所得税納付というように、各項目と実施時期を照らしあわせて管理することで、正確に対応しやすくなります。

業務引き継ぎや担当者異動時の対応

人事担当者が異動や退職する場合、スケジュール管理が途絶えてしまうリスクがあります。業務の属人化を避け、誰が担当してもスムーズに引き継ぐ体制を構築しておきましょう。業務引き継ぎや担当者異動時の対策ポイントは、以下のとおりです。

業務マニュアルの作成具体的な作業手順や注意点を明記
業務内容の定期的な共有平常時から業務引き継ぎリハーサルを実施
デジタルツールの活用データや進捗状況を共有できるように整備

人事業務は法定期限が厳格に定められている手続きが多いため、属人化を防ぎ、誰でもスムーズに引き継げる体制が求められます。業務が一時的に滞ることで企業全体に影響が出るため、事前準備と適切な管理が不可欠です。

まとめ

パソコンに向かう男性

人事の年間スケジュールを適切に管理するためには、法改正や繁忙期を考慮した計画性が不可欠です。定期的に業務フローを見直し、改善点を洗い出すことで、持続的な効率化を図ることが求められます。適切な管理体制を整え、人事業務がスムーズに遂行できる環境を作ることで、企業全体の運営を支える基盤を強化しましょう。

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