パワハラ行為者に対する適正な措置の実施と再発防止について

パワーハラスメント防止指針により、職場におけるパワーハラスメント行為が確認できた場合は、速やかに行為者に対する措置を行うこととされています。

企業は行為者に対して、どのような対応を取れば良いのでしょうか。

目次

就業規則、服務規律等による懲戒処分等

職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、速やかに行為者に対する措置を適正に行う必要があります。具体的には、行為者に対して就業規則その他の職場における服務規律等を定めた規程に基づき、必要な懲戒処分を行います。

行為者への制裁は、公正なルールに基づいて行うことが重要です。

就業規則や服務規律等にパワーハラスメント行為に対する処分の規定が無い場合は、懲戒処分をすることができません。ここで処分をしてしまうと処分無効で訴えられる可能性も出てきますので、就業規則にパワーハラスメント行為に対する懲戒規定があることを、確認する必要があります。

その他懲戒処分と併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること等が考えられます。

行為者研修

行為者に対して懲戒規定に沿った処分を行うだけでなく、行為者の言動がなぜパワーハラスメントに該当し、どのような問題があるのかを真に理解させることが大切です。

自分ではパワーハラスメント行為をしているとは思っていない「無意識・無自覚のパワハラ行為者」と呼ばれる人が多くいます。職場での行為者は上司が圧倒的に多く、部下への指導の延長線上で行われているパワーハラスメント行為が多く見受けられます。行為者である上司が、部下からパワーハラスメントを訴えられても、「自分は部下を叱咤激励しただけなのにそんなことも理解できずパワハラだと訴えた部下が悪い」、と開き直る人もいる一方で、自分の言動がパワハラ行為だと訴えられことで、自身も傷つき、悩み、精神的に病んでしまう行為者もいます。

会社としては、職場で働く人が安心して働ける職場環境を構築する責務がありますので、行為者にパワーハラスメントの言動を改めてもらう必要があります。行為者自身が自分の言動に問題があったと自覚しない限り、職場でパワーハラスメント行為は無くなりません。それには「行為者研修」を受講してもらうのが効果的です。

「行為者研修」とは、行為者に対して気づきを与え、意識付けをさせることを重点的に行う研修のことです。

内容としては下記のようなものがあります。

・今までの言動を振返り、自身の言動のどこがいけなかったのかを考える

・パワーハラスメントに対する正しい知識を身につける

・感情をコントロールする手法を学ぶ

・自分の言動が職場で周囲にどのような影響を及ぼすのかを考える

・今後はどのようにしたら同じ言動を繰り返さないようになるかを考える など

行為者も大切な従業員の一人です。被害者と同じように、行為者にも会社は必要な手立てを講じる必要があります。

再発防止策

職場におけるパワーハラスメント問題が解決した後は、これまでの防止対策に問題がなかったか再点検し、改めてパワーハラスメントに関する会社の方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずる必要があります。(パワーハラスメントの事実が確認できなかった場合においても同様)

再発防止策としては、啓発のためのポスターの掲示、社内報、パンフレット等の配布、研修の実施、相談窓口の周知などが挙げられます。従業員の中には、相談窓口に相談するほどではないが、パワーハラスメント行為を見聞きして不快に感じている人もいます。そういった声を拾うことで、パワーハラスメント問題を未然に防止できることもあります。その声は待っているだけでは来てはくれません。こちらから探しに行く努力が必要です。「相談窓口は敷居が高く相談しづらい」、あるいは「相談窓口に相談したことを誰にも知られたくない」、と思っている人は多くいます。相談窓口担当者が、定期的に全員と面談することで、小さな声を拾うことができるかもしれません。また社内アンケートを実施することで面談でも話せなかったことを書いてくれるかもしれません。匿名で実施をすればより多くのリアルな職場の声を拾うことができると思います。

この様な全社員対象の面談やアンケート調査は、会社のパワーハラスメントに対する取組の本気度が従業員へ伝わりますのでお勧めします。

それぞれの会社に合った方法で、しっかりと再発防止策を講じて下さい。

この記事を書いた人

社会保険労務士・ハラスメント防止コンサルタント 栖原圭子

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