社長や役員の仕事中のケガはどうすれば救済される?(労災保険特別加入制度)(1/2)

皆さん労災保険(労働者災害補償保険)は、仕事中のケガや仕事が原因でなってしまう病気などを補償する保険であることはご存知でしょう。

労災(仕事中の災害)と認められれば病院での費用負担はなくなり、仕事を休んだ日に対してお給料のだいたい8割を補填してもらえます。

しかし、社長や役員の仕事中のケガはいくら会社として労災保険の手続きをきちんとしていても普通労災保険は使えません。また健康保険も使えません。

ではどうすればいいのでしょうか?

目次

社長や役員は労働者ではない=労災保険は使えません

そもそも労災保険は、本来、労働者の保護を目的とした制度です。

そのため事業主、自営業者、家族従事者など労働者ではないと扱われる方は、保護の対象とはなりません。

しかし、労働者ではないと扱われる方の中には、業務の実態や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護することがふさわしい人がいます。

例えば従業員数名の会社だと社長だって従業員と同じ作業をしますよね。

そこで、こういった方々が特別に労災保険に入れるようにした制度が「労災保険特別加入制度」です。

すべての特別加入制度は労働保険事務組合を通じて加入手続きを行います。

意外と一般的には知られていないこの特別加入制度と労働保険事務組合について説明します。

労働保険事務組合とは

労働保険事務組合とは、事業協同組合、商工会議所、その他の事業主の団体またはその連合団体が、その団体の事業の一環として併設する団体です。

そして設立時に厚生労働大臣の認可を受けています。

例えば、弊所も社会保険労務士法人飯田橋事務所の併設団体として「労働管理協会」という労働保険事務組合を創業以来組織しています。

弊所のように社会保険労務士が主体となる事務組合もあれば、業界団体などが主体の事務組合もあります。

事務組合は事業主から委託された労働保険事務の処理を行うのが仕事です。

労働保険と労働保険事務組合の関係

労働保険というのは、労災保険と雇用保険を合わせたものです。

会社または個人事業主がアルバイトやパートも含め、誰かしら「人(同居家族以外)を雇う」ことをしたら発生する強制保険です。

毎日人を雇っていなくても、1年間に100日以上人を雇って仕事をしてもらっている場合には、常時労働者をしているものとして取り扱われます。

保険というからには保険料を払って、給付を受けるのが当たり前です。

労働保険の場合はその保険料は国に対して払い、給付は労災事故の際の病院に払うお金や仕事を失ったときの失業保険の給付として受取ります。

労働者を雇っている会社や個人事業主はそういった保険料を納めたり、失業保険に必要な離職票の手続きを行わなければなりません。

企業としてきちんとした総務部門があれば別ですが、実際の手続きは面倒な書類作成などが多く、事務は大変ですよね。

労働保険事務組合は上記のような面倒な事務を事業主から委託されて代行します。

労働保険事務組合に事務委託することは多くのメリットがありますが、労災保険を請求する手続きは、一般の労働保険事務組合では対応することができません。

しかし、当事務所が運営する労働保険事務組合 労働管理協会では、社会保険労務士事務所が事務組合を併設しているため、資格を持った社労士が労災保険を請求する手続きに対応します。

労働保険事務組合の業務内容と事務委託するメリット

労働保険事務組合は委託を受けた事業主に代わって以下の事務を処理します。

・労働保険の適用(労働者を雇ったら保険成立届を届出します)

・労働保険料の申告・納付(毎年の労働保険料がいくらなのか国へ報告し事業主より保険料を一旦預かり、まとめて国へ納付します)

・雇用保険手続き(入社・退社に伴う事務を行います)

ほかにも事務組合に労働保険事務を委託するメリットは下記の点が挙げられます。

・労働保険料の額にかかわらず最大3回に分割して納付できること(事務組合に委託していない場合は、一定額を超えないと分割納付ができません。)

・労災特別加入ができること

ここでやっと冒頭の特別加入制度と労働保険事務組合とのつながりがご理解いただけたでしょうか。

次回の記事『社長や役員の仕事中のケガはどうすれば救済される?(労災保険特別加入制度)(2/2)』では、「特別加入制度」について詳しく説明します。

この記事を書いた人

社会保険労務士 宮村真紀

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