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なぜ就業規則は必要か!?

​​​​​​​ 就業規則の作成及び届出については、労働基準法第89条で「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項(※)について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。」とあります。

※絶対的必要記載事項及び相対的必要記載事項


 このように就業規則の整備については法律による定めがあります。法律に定められていることは「しなければならない」ことです。だから「就業規則は必要である」ということであなたは納得できるでしょうか。

 そのように納得した就業規則は、あなたの会社にとってどんな意味があるでしょうか。


 この問いを考えていくにあたって、まずは、就業規則を法的な観点からその必要性についてみていきます。そして、最後に「なぜ就業規則は必要なのか」を考えるきっかけを探ってみたいと思います。


目次[非表示]

  1. 1. 就業規則の役割とは何か
  2. 2.就業規則に記載しなければいけない事項とは何か
  3. 3.そもそも就業規則はなぜ必要か!?


 就業規則の役割とは何か

 「企業経営は、企業設備に労働力が組織的に結びつけられてはじめて合理的、能率的運営が図られる。しかして、労働力が組織的に企業経営に組み入れられるためには、労働者の労働条件や職場規律を画一的に規制することが要請される。就業規則は、このような目的のもとに作られるわけである。」(厚生労働省労働基準局「平成22年版労働基準法下-労働法コンメンタール3-」より抜粋。以下同じ。)


 就業規則の役割については法律では特に定められていません。「事業場における労働者の行動を規律し、労働者はこれに拘束されるという意味で社会規範として作用をもつことについては、一般に認められているところである。」(同)とされていますが、就業規則の法的性質については、法規範説、事実規範説、契約説などがあるようです。


 労働契約法第7条では、「労働契約締結に際して、合理的な労働条件が定められている就業規則は、それを労働者に周知させていたことを要件に、原則として労働契約の内容となることを定め」(同)ており、就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となると考えられています。


 そのような背景を踏まえ、就業規則の主な役割として下記のようなものがあると考えられます。


① 職場就業に関するルール(服務規律)

 企業の秩序を維持し、働きやすい職場環境を作るためのルール(行為規範)としての役割

② 労働契約内容となる会社労働条件

 多数の従業員の労働条件を統一的・画一的に設定することによる組織的効率化(最低基準、公平性の確保)を図り、労使紛争を防止する役割

③ 業務命令、人事権労使合意

 労働契約を締結しても当然には労働契約の内容とならない業務命令権、人事権の労使合意としての役割

④ 経営者考え従業員伝える

 「今後会社をどうしていくのか、そのために従業員にどうしてもらいたいのか」など、経営者の考え(経営理念)を従業員に伝える役割


就業規則に記載しなければいけない事項とは何か

 就業規則には記載しなければいけない事項は法律で定められています。「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」です。これら以外に使用者が自由に定めることができる事項として任意的記載事項(例えば、就業規則の制定趣旨ないし根本精神を宣言した規定、就業規則の解釈及び適用に関する規定等)がありますが、ここでは「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」について確認します。


【絶対的必要記載事項】

 いかなる場合であっても必ず記載しなければいけない事項です。


① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項

② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の 締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)


【相対的必要記載事項】

 当該事業場で定めをする場合に必ず記載しなければならない事項です。


① 退職手当に関する事項(適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、退職手当の支払時期)

② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項

③ 食費、作業用品などの負担に関する事項

④ 安全衛生に関する事項

⑤ 職業訓練に関する事項

⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

⑦ 表彰、制裁に関する事項

⑧ その他当該事業場の労働者のすべて(※)に適用される事項

※一定の範囲の労働者のみに適用される事項ではあるが、労働者のすべてがその適用を受ける可能性があるものも含まれると解される。


 これらの必要記載事項を欠いていた場合は、労働基準法第89条違反となりますが、就業規則の効力については、「当該事業場が適用を受けるべき事項を記載しない就業規則も、その効力発生についての他の要件を具備する限り有効である。」(同)と解されており、直ちに無効となるものではありません。


 まずは現在の就業規則の記載事項に漏れがないかを確認しましょう。その上で、それら一つひとつのルールがなぜ必要なのかを考えてみましょう。


そもそも就業規則はなぜ必要か!?

 およそ考えられる就業規則の役割と記載しなければいけない事項について確認してきました。では最後に、そもそも「なぜ就業規則は必要なのか」を考えてみたいと思います。先に言ってしまうと答えはありません。皆さんなりに考えてみてください。


 「法律で決まっているから(仕方なく)」

 「行政指導を受けたから(仕方なく)」

 「助成金の申請に必要だから(仕方なく)」


 このような理由で(仕方なく)作っているといったことはないでしょうか。就業規則は作る目的によって内容も異なります。結局のところ目的以上のものを作ることはできません。作る理由(原因)が先にあるのではなく、何のために「在るのか」という目的から考えていくことが、企業経営に必要な就業規則を考えるうえで大切だと思います。


 では、「企業経営」とは何でしょうか。そのように考えていくと経営者の大切にしたい価値観が見えてくるのではないでしょうか。


 就業規則を拝見するとその会社の労務管理の状況や問題点、考え方など、その会社の姿が見えてきます。雛形の就業規則を少しいじっただけのものであってもそれは現れています。就業規則はその会社の在り方を現わしているのです。


 「就業規則はあなたの会社にどのような意味をもたらしてくれるでしょうか?」


横島 洋志

横島 洋志

特定社会保険労務士 茨城県生まれ。大手飲料メーカー、広告代理店などでの営業勤務を経て、平成19年に社会保険労務士の資格を取得。平成29年に特定社会保険労務士付記。