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【休職者対応が分かる】休職から職場復帰までの6つのステップ

 コロナの影響でリモートワークやオンラインによる打ち合わせが多くなりました。在宅勤務によって他の人とのコミュニケーションが減り、メンタル不調になるケースも出ているようです。

​​​​​​​ ではメンタル不調により休職となる従業員が出た場合、会社として人事担当者は従業員に対し、どのような対応を取るのが適切なのでしょうか。


 今回は、従業員から休職発令から職場復帰まで人事担当者が押さえるべき流れをステップに分けて説明していきたいと思います。


目次[非表示]

  1. 1.休職させるには自社に休職制度があるか確認
  2. 2.休職制度がない場合は?
  3. 3.【6つのステップ】休職から復職までの対応の流れ
    1. 3.1.【第1ステップ】休職開始及び休職中のケア
    2. 3.2.【第2ステップ】主治医による職場復帰可能の判断
    3. 3.3.【第3ステップ】職場復帰の可否の判断
    4. 3.4.【第4ステップ】職場復帰支援プランの作成
    5. 3.5.【第5ステップ】最終的な職場復帰の決定
    6. 3.6.【第6ステップ】職場復帰後のフォロー
  4. 4.まとめ

休職させるには自社に休職制度があるか確認

 そもそも、従業員のメンタル不調により休職を発令するためには、会社が休職に関する制度を就業規則定める必要があります。

 就業規則に定める事項には、

1..絶対的必要記載事項

2.相対的必要記載事項

の2つの事項があります。


 必ず記載しなければならない事項は「絶対的必要記載事項」、会社で制度を設ける場合に記載しなければならない事項は「相対的必要記載事項」となります。

 それ以外にも、会社の任意で記載することができる任意記載事項があります。


 休職に関する規定は、「相対的必要記載事項」となります。

 つまり、制度を設けるか否かは会社が決めることができます。

 従業員が休職するためにも、まずは自社の制度がどうなっているのか確認しましょう。


休職制度がない場合は?

     では、休職制度がない場合はどうなるのでしょうか。


 もし仮に休職制度がなかった場合、メンタル不調で働けなくなった従業員はどうなるでしょうか。

従業員は会社と約束した労働契約の内容で働くことができなくなるため、労働契約の解除、つまり解雇ということになってしまいます。


 ただし、労働契約法第16条で、解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされており、会社が従業員を解雇することはハードルの高いものとなっています。


     休職制度は、退職のトラブルをなくすためにも必要な制度です。


【6つのステップ】休職から復職までの対応の流れ

【第1ステップ】休職開始及び休職中のケア

 上司(以下「管理監督者」といいます。)は部下がこれまでと様子が違うと感じたり、遅刻や欠勤など休みがちになってきたときは、まずは面談の場を設定して話を聞くことから始めます。

 面談の結果、メンタル不調が疑われる場合は、人事担当者や産業医等の専門家と連携して医療機関の受診などを含めた今後の対応を検討します。


 休職の開始は、従業員から主治医の診断書を管理監督者に提出してもらうことから始まります。その際、必要な療養期間の見込みについても明記してもらうと良いでしょう。診断書をもとに会社は就業規則に基づき休職を発令します。


 管理監督者は、診断書が提出されたら人事担当者及び産業医等に連絡します。休職中に従業員が不安を抱かないように、人事担当者は社内の休職制度(休職期間、休職期間中の取扱い、復職判定流れ復職手続き、休職期間満了手続きなど)について、本人家族に対して口頭だけでなく文書により説明します。

 休職中の補償としては、健康保険の被保険者であれば傷病手当金手続きについても説明します。


 また、休職開始後は、職場復帰支援に向けて、従業員の同意を得た上で主治医に職場の実情を伝え、職場復帰に関する意見を得るなどの連絡をとることも必要となります。


 休職中は、従業員が精神的な孤独、復職できるかという不安、今後のキャリアなどについて不安を感じます。そのような不安を軽減するためにも、休職中の従業員が相談できる場の提供や社外で利用できる相談機関の情報提供を行うことも検討します。

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【第2ステップ】主治医による職場復帰可能の判断

​​​​​​​     休職中の従業員から職場復帰の意思が伝えられたら、人事担当者は従業員に対して主治医による職場復帰に関する診断書を提出してもらうように説明します。診断書には、就業配慮に関する主治医の具体的な意見記述してもらうと良いでしょう。


 ただし、主治医による診断書の内容は、病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限りません。また、従業員や家族の希望が含まれている場合もあります。

 【第1ステップ】で記載したとおり、事前に従業員の同意を得た上で主治医に職場で必要とされる業務遂行能力の内容等に関する情報を提供し、職場復帰に関する意見書を記入するよう依頼することも考えておく必要があります。


 また、産業医等がいる場合は、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等の意見を聞くことが重要となります。産業医等がいない場合は、会社指定の医師(精神疾患に関する専門医)の受診を義務付けるなどの検討も必要です。


【第3ステップ】職場復帰の可否の判断

​​​​​​​ 主治医診断書が提出されたら、最終的な決定の段階として、産業医中心に人事担当者及び管理監督者は、職場復帰可否を判断するために下記の事項について情報収集評価行います

※従業員のプライバシーに十分配慮しながら行いましょう。


(1)   従業員の職場復帰に対する意思の確認

(2)     産業医等による主治医からの意見収集

診断書の内容だけでは不十分な場合、産業医等は従業員の同意を得た上で、必要な内容について主治医からの情報や意見を収集する。

(3)     従業員の状態等の評価

治療状況及び病状の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する従業員の考え、家族からの情報

(4)     職場環境等の評価

 業務及び職場との適合性、作業管理や作業環境管理に関する評価、職場側による支援準備状況

(5)     その他

 その他必要事項、治療に関する問題点、本人の行動特性、家族の支援状況や職場復帰の阻害要因等


【引用資料】「改訂 心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)を一部修正


 収集した情報の評価をもとに、復帰後に求められる業務が可能かどうかについて、主治医の判断や産業医等の意見を考慮して、「職場復帰可否について判断を行います。

 職場復帰の判断基準の例としては下記を参考にしてください。


・    従業員が十分な意欲を示している

・    通勤時間帯に一人で安全に通勤できる

・    決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である

・    業務に必要な作業ができる

・    作業による疲労が翌日までに十分回復する

・    適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない

・    業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している  

など


【引用資料】「改訂 心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)を一部修正


【第4ステップ】職場復帰支援プランの作成

 職場復帰が可能と判断された場合は、以下の項目について検討し、産業医等を中心に、人事担当者及び管理監督者、休職中の従業員の間で連携しながら「職場復帰支援プラン作成を行います。


(1)     職場復帰日

(2)     管理監督者による就業上の配慮

 業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など

(3)     人事労務管理上の対応等

 配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性

(4)     産業医等による医学的見地からみた意見

 安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見

(5)     フォローアップ

 管理監督者や産業医等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し

(6)     その他

 従業員が自ら責任を持って行うべき事項、試し出勤制度の利用、事業場外資源の利用


【引用資料】「改訂 心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)を一部修正


 職場復帰は休職前の職場復帰させること原則です。ただし、当該職場における人間関係やハラスメントなどを誘因として発症したケース等においては、配置転換や異動を考慮したほうが良い場合もあります。

 職場復帰後の具体的な就業上の配慮の例としては下記を参考にしてください。


・    短時間勤務

・    軽作業や定型業務への従事

・    残業・深夜業務の禁止

・    出張制限

・    交替勤務制限

・    危険作業、運転業務、高所作業、窓口業務、苦情処理業務などの制限

・    フレックスタイム制度の制限または適用

・    転勤についての配慮  

など


【引用資料】「心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)を一部修正


【第5ステップ】最終的な職場復帰の決定

 職場復帰支援のプランが具体的になってきたところで、いよいよ以下の流れで会社による最終的な職場復帰決定を行います。主治医や産業医等の意見を聞いた上で、職場復帰に関する最終的な責任は会社が負うことになります。


(1)     従業員の状態の最終確認

 疾患の再燃・再発の有無等について最終的な確認を行う。

(2)     就業上の配慮等に関する意見書の作成

 産業医等がいる場合は、産業医等に「職場復帰に関する意見書」等を作成してもらう。

(3)     会社による最終的な職場復帰の決定

 会社は最終的な職場復帰の決定を行い、就業上の配慮の内容についても併せて従業員に対して通知する。

(4)     その他

 職場復帰についての事業場の対応や就業上の配慮の内容等が従業員を通じて主治医に的確に伝わるようにする。


【引用資料】「改訂 心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)を一部修正


【第6ステップ】職場復帰後のフォロー

 職場復帰後は、管理監督者による観察支援のほか、産業医によるフォローアップを実施します。フォローアップのための面談においては、下記の事項を中心に従業員及び職場の状況につき従業員本人及び管理監督者から話を聞き、適宜職場復帰支援プランの評価や見直しを行います。


(1)     疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認

 疾患の再燃・再発についての早期の気づきと迅速な対応が不可欠。

(2)     勤務状況及び業務遂行能力の評価

 従業員の意見だけでなく、管理監督者からの意見も合わせて客観的な評価を行う。

(3)     職場復帰支援プランの実施状況の確認

 職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認する。

(4)     治療状況の確認

 通院状況、病状や今後の見通しについての主治医の意見を従業員から聞く。

(5)     職場復帰支援プランの評価と見直し

 さまざまな視点から評価を行い、問題が生じている場合は、関係者間で連携しながら、職場復帰支援プランの内容の変更を検討する。

(6)     職場環境等の改善等

 職場復帰する従業員がストレスを感じることの少ない職場づくりをめざして、作業環境・方法や労働時間・人事労務管理など、職場環境等の評価と改善を検討する。

(7)     管理監督者、同僚等の配慮

 職場復帰をする従業員を受け入れる職場の管理監督者や同僚等に、過度の負担がかかることのないよう配慮する。


【引用資料】「改訂 心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)を一部修正


まとめ

 休職制度の必要性と、休職から職場復帰対応までの6つのステップを見てきました。規定の整備だけでなく、休職から職場復帰までの各場面における注意点などもありますので、必要に応じて見直しましょう。


 メンタルに不調をきたすと正常な業務遂行に大きな影響を及ぼします。ここでは休職するようなメンタル不調を想定して説明しましたが、メンタル不調は明確に診断名がつけられるものばかりではありません。

 普段仕事をしていても気分が落ち込んだり、会社に行きたくないと感じることは誰もが感じる可能性がありますし、メンタル不調は誰にでも起こり得る症状です。


 その状態が長引けば長引くほど本人も辛い思いをし、会社もどう対応していいか分からなくなります。メンタルヘルス対策とは、メンタル不調に苦しむ従業員が出た時の対応だけでなく、周囲の理解やメンタルヘルスの予防という観点からも必要な知識です。

 会社の制度が整っていることは重要ですが、心の問題に対しては、その人の心の声に耳を傾ける姿勢が何より大切だということを忘れてはいけません。




【参考資料】「改訂 心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)

  心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~について紹介しています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html

※「改訂 心の健康問題により休職した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)では、職場復帰支援の流れが「5つのステップ」となっています。



社会保険労務士法人飯田橋事務所

特定社会保険労務士・産業カウンセラー 横島 洋志

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