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テレワークのガイドラインと今後の課題

新型コロナウイルス感染症予防拡大で、これまで在宅勤務を導入してこなかった企業も在宅勤務をせざるを得ない状況になったところが多いのではないでしょうか。

十分な準備ができず在宅勤務に踏み切った企業では、様々な課題も見えてきたのではないかと思います。


今回は、平成30年2月22日に厚生労働省から出された「情報通信技術を利用した事業場外勤務(テレワーク) の適切な導入及び実施のためのガイドライン」の概要とテレワークの課題について個人的な感想も含めてお話したいと思います。


目次[非表示]

  1. 1.テレワークとは何か
  2. 2.ガイドラインが示すテレワークのメリットと問題・課題
  3. 3.ガイドラインの概要
  4. 4.まとめ



テレワークとは何か

テレワークは下記の3つの形態に分類されます。

(1)   在宅勤務

(2)   サテライトオフィス勤務

(3)   モバイル勤務

今回のコロナウイルス感染症予防でテレワークを実施している企業は、(1)の自宅で仕事を行う在宅勤務を実施していることと思います。


(2)のサテライトオフィス勤務は、メインオフィス以外の自宅近くや通勤途中のオフィス(例えばレンタルオフィスなど)での勤務、(3)のモバイル勤務はノートPCや携帯を活用し移動しながら柔軟に働く場所(例えば喫茶店など)を選択できる勤務といったイメージかと思います。



ガイドラインが示すテレワークのメリットと問題・課題

 テレワークの労働者・使用者それぞれにとってのメリット、問題や課題について、ガイドラインには下記のとおり記載されています。


(1)   労働者にとってのメリット

・通勤時間の短縮

・業務の効率化・時間外労働の削減

・育児や介護と仕事の両立の一助に

・仕事と生活の調和を図ることが可能 等

(2)   使用者にとってのメリット

 ・業務効率化による生産性の向上

・育児・介護等による労働者の離職の防止

・遠隔地の優秀な人材の確保

・オフィスコストの削減 等

(3)   問題や課題

労働時間管理が難しい

仕事仕事以外切り分け難しい

長時間労働になりやすい 等

 

これらについては、最後に個人的な感想のところでも触れたいと思います。


ガイドラインの概要

 テレワークを行う労働者についても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されます。個々の詳細は下記のガイドラインの概要をご覧いただき、ここでは労働時間管理に絞ってお話したいと思います。


【テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン】

https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf


3-1 労働基準関係法令の適用及び留意点

 テレワークであっても労働時間の適正な把握必要となります。テレワークで生じやすい事象として「中抜け時間」や勤務時間の一部でテレワークを行う際の移動時間等について挙げられています。

 

 「中抜け時間」については、使用者業務指示をしないこととし、 労働者労働から離れ、自由利用すること保障されている場合は休憩時間と同じ扱いとなります。


 また、勤務時間の一部でテレワークを行う際の移動時間については、使用者移動すること労働者に命ずることなく、単に労働者自ら都合により就業場所移動その自由利用保障されている時間については休憩時間として取り扱うことが可能とされています。ただし、この移動が業務の必要性により使用者の命令により行われる場合は労働時間となります。


3-2 事業場外みなし労働時間制適用の注意点

 では事業場外みなし労働時間制を適用することは可能でしょうか。これについては、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、労働基準法第38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制が適用されるとされています。


 具体的には、下記の要件のいずれも満たす必要があります。

(1)   情報通信機器が、使用者指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと(情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態を指す)

(2)   随時使用具体的な指示基づいて業務行っいないこと


なお、事業場外みなし労働時間制が適用される場合でも、使用者は労働者の健康確保の観点から、勤務状況把握適正な労働時間管理を行う責務有するとされています。



まとめ

ガイドラインにあるメリットや問題・課題の他に、私が在宅勤務をして感じたメリットや課題をお話してみたいと思います。あくまで個人的な感想になりますのでご了承ください。


4-1 私の感じた在宅勤務のメリットとデメリット・課題

 今回のコロナウイルス感染症予防で、当事務所は十分な準備期間がないまま在宅勤務に踏み切りました。

 在宅勤務をしてみて私が感じたメリットは、通勤時間が無くなった分、子どもの保育園の送り迎えができるようになった(家族と過ごす時間が増えた)ということです。

 

一方、デメリットや不便に感じた点、課題の方が多いように感じました。

・    ルーティン業務は効率が悪くなった(ペーパーレスが進まないと不便)

・    ずっと家にいるので、仕事とプライベートの気持ちの切り替えが難しい(いつも仕事に追われているようで落ち着かない)

・    家族との時間が増えた一方、子どもが家にいるときは仕事にならない(子どもが学校休校で在宅勤務をしている方は感じている人が多いのではないでしょうか)

・    コミュニケーションツールやメールの受信に敏感になってしまう(人によると思いますが)

・    気分の落ち込み、不安感など(メンタルヘルスの危険性)


4-2 「つながらない権利」と今後のテレワーク

 以前NHKのある番組で「つながらない権利」という特集をやっていました。休日や終業時刻後にも業務のメールや電話がかかってきて、眠れなくなったりうつ病を発症したりしている人がいるという内容です。いつもスマホが鳴っているように聞こえてしまう「幻想振動症候群」といわれる症状も紹介されていました(私もそれに近いものを感じることがあります)。ちなみに「つながらない権利」とは、業務時間外の仕事の連絡を拒否できる権利で、フランスやイタリアなどの海外では法制化されているようです。


テレワークでは見えない部分が多くなり、ITツールでいつでもつながる状態というのは便利である反面、見えないがための怖さがあると感じました。例えば、「あの人は本当に仕事をしているのだろうか」などと疑い始めたらきりがありません。日本人ならではの横並び意識からくるのでしょう。また、送られてくるメッセージの内容によっては、送ってきた相手を考えただけで気が重くなってしまうこともあります。


テレワークという働き方やツールの使用は、マナールールがセットで考えられないとうまく機能しないと感じています。また、信頼関係がなければうまく運用できないでしょう。


ある経営者が「在宅勤務は休みぐらいの気持ちでやった方が成果は上がる」と言っていたのが印象的でした。業務の内容にもよるとは思いますが、自分のペースで仕事ができれば生産性の向上につながるかもしれません。

今後のテレワークで発揮される仕事の成果は、労働時間の長さではなく、労働時間の質に比例するのではないかと私は考えています。

横島洋志

横島洋志

特定社会保険労務士 産業カウンセラー 茨城県生まれ。大手飲料メーカー、広告代理店などでの営業勤務を経て、平成19年に社会保険労務士の資格を取得。平成29年に特定社会保険労務士付記。