解雇と解雇規制

 労働者が会社を辞めることとなる場合、それが「解雇」に当たるか、「退職」に当たるかによって法律上の違いが生じ、「解雇」の場合には法的な制限があります。

解雇の種類

事業の経営上の必要性による「整理解雇」
労働者の事情を理由とする「普通解雇」、「懲戒解雇」
有期雇用契約の契約更新せずに打ち切る「雇止め」
解雇権濫用法理

 『解雇権濫用法理』とは、昭和50年に初めて最高裁の判例として確立されたものです。
 この判決では『使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると是認することができない場合には、権利の濫用として無効となると解されるのが相当である』とされています。

 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
 この規定は、解雇をめぐるトラブルが増大し、その防止・解決を図るには、解雇に関する基本的なルールを明確にすることが必要とされたことから、平成15年の法改正において、これまで労使当事者間に十分に周知されていなかった「解雇権濫用法理」が労働基準法(労基法第18条の2)に明記されました。(労基法のこの条文は、労働契約法の成立により、労働契約法第16条に移行しました。)

整理解雇(次の4つの観点から、解雇権濫用の有無が判断されます。)
人員削減を行う経営上の必要性の有無(特定事業部門の閉鎖の必要性など)
十分な整理解雇の解雇回避努力(配置転換等をする余地)
解雇対象者の選定の妥当性(選定基準が客観的、合理的)
解雇手続きの妥当性(被解雇者や労働組合との十分な協議)

繰り返し、執拗な「退職勧奨」は違法

就業規則の解雇事由の拘束力

 労使当事者間において、解雇についての事前の予測可能性を高めるために、平成15年の法正において、就業規則(第89条の3)に「退職に関する事項」として「解雇の事由」を記載する必要があると明記されました。この解雇事由の定めは、解雇事由を限定的に列挙したものか、例示的に列挙したものかが問題となります。

労働者の事情を理由とする解雇

 労働者側の事情を理由とする解雇は、何れの場合にも解雇の効力は、1解雇権濫用法理の下での就業規則上の解雇事由に該当するか、 2解雇理由に合理性はあるか、3解雇の社会的相当性はどうか、等により判断されます。労働者側の事情を理由とする普通解雇には、次のような解雇があります。

傷病等による労働能力の低下を理由とする解雇
能力不足・適格性欠如等を理由とする解雇
非違法行為を理由とする解雇等
懲戒解雇

 懲戒解雇について、ダイハツ工業事件で最高裁は、「客観的に合理的理由を欠くものではなく、社会通念上相当と認められ、権利の濫用には当たらない」としました。

 新しい労働契約法では、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」(労契約法第15条)と規定されました。

有期労働契約(雇止め)

有期雇用者の解雇

 有期雇用者の「解雇」について新しい労働契約法では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの期間において、労働者を解雇することができない。」(労契約法17条)と定められました。

 また、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」と定め、必要以上に短い契約期間を定めて更新を繰り返すことのないように定められました。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(労基法第14条の第2項)

 有期労働契約については、契約更新の繰り返しにより、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させる等の、いわゆる「雇止め」をめぐるトラブルが発生しています。
 このトラブルを防止するために、使用者が講ずべき措置について、厚生労働大臣が基準を定めています。

厚生労働大臣が定める基準の内容(契約締結時の明示事項等)

使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示 しなければなりません。
使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、 契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。
使用者は、有期労働契約の締結後に (1)又は (2)について変更する場合には、 労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。

雇止めの予告

 使用者は、契約締結時に、その契約を更新する旨明示していた有期労働契約 (締結している労働者を1年以上継続して雇用している場合に限ります。)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。

雇止めの理由の明示

 使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。 また、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。

契約期間についての配慮

 使用者は、契約を1回以上更新し、1年以上継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。

解雇制限・解雇予告

法令上の解雇制限

解雇権濫用による解雇(労働契約法第16条)
業務上の負傷により休業している期間とその後30日間(労基法第19条)但し、労働基準法第81条による打ち切り補償を支払う場合を除く。
産前産後の休業期間とその後30日間(労基法第19条)
国籍・信条・社会的身分差別(労法第3条)、女性差別(均等法第8条)、労働組合員差別(労組法第7条1号)を理由とする解雇。
権利行使や法違反を行政官庁に等に通告したことを理由とする解雇(育児・介護法10条、16条、労基法104条2項、案衛法97条2項、公益通報者保護法第3条など)

解雇の予告(労基法第20条)

 労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日以上前にその予告をしなければなりません。予告をしない場合は、平均賃金の30日分以上(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

予告の方法

 解雇予告は口頭でも可能ですが、後日の紛争を避けるためにも文書で行うことが大切です。
 なお、予告日数は、1日について平均賃金を支払った場合は、その日数を短縮することができますので、予告期間が30日未満の場合は、不足する日数分の予告手当を支払う必要があります。

 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合で、その事由について所轄労働基準監督署長の認定を受けた時は、解雇予告が除外されます。

解雇予告などの手続が除外される労働者

次に掲げる者については、解雇予告や解雇予告手当の支払をすることなく、解雇することが出来ます。

日々雇い入れられる者(1ヶ月以内)
2ヶ月以内の期間を定めて使用される者(契約期間以内)
季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者(契約期間以内)
試用期間中の者(14日以内)

退職時の証明(労基法第22条第1項)

 労働者が退職(解雇を含む)の際に、在職中の契約内容などについて証明書の交付を請求した場合は、使用者は遅滞なくこれを交付しなければなりません。 なお、労働者の請求しない事項を証明書に記入してはいけません。

解雇理由の明示(労基法第22条第2項)

 解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、労働者が当該解雇の理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく、これを交付しなければなりません。なお、労働者の請求しない事項を記入してはいけません。

 解雇をめぐるトラブルを未然に防止し、その迅速な解決を図るために、退職時の証明に加えて、「労働者は、解雇の予告をされた日から退職の日までの間においても、解雇の理由についての証明書を請求できる」ようになっています。